中年の勃起不全で入院中の吉本(=田村嘉規)、童貞でこれも勃起不全の青年・三ツ橋(=山谷怜)、二人の主治医のドクター(=フレンチ)。
やがて分かってくるのだが、吉本は妻を事故で亡くしてからの病状であり、三ツ橋は好きな女性と最後まで行けなくて苦しんでいる。ドクターは精神療法で二人の復活を助けようとするが、旧友である患者の吉本は亡妻を忘れられず緩慢な自殺願望である。
何とか通常の状態になりたい三ツ橋は、吉本の過去を聞いて狂おしく悩む。ラストは花火大会の夜。吉本の妻は花火大会を観に行った時の事故だった。三ツ橋も花火大会のデートで勃起不能を知ったのだ。
お下品な話題を扱いながら、男の存在証明・存在意義を問いかけるような重厚な物語を、男性の生理的本能という形で提出した。
それが少しも下品にならず生き方を考えさせる重い主題を呈した舞台となった。
初演を観た感想とほとんど同じで、その重く切ない記憶が再演の観劇の動機だったが、それは裏切られなかった。だが、初演時の細かな記憶はなく、終演後にきいてみたら戯曲にはまったく手を入れていないということだった。
例えば、三つのコップに水差しから一定時間内に同量の水を入れるという精神安定のための療法の場面とか、ラストシーンの花火大会の回想場面とか……今回が初見かと思った僕の記憶力の減退に大いに驚く。余分な感想を持ってしまった。 |