岸田國士 小作品集

観劇日時/14.11.28.
上演団体名/FAP’S 企画

舞台監督/宏光洋一 美術/福田恭一
照明/鈴木静悟 音響/中村隆
衣装/早瀬雅美 小道具/川口まゆみ
結髪指導/ビューテー・サロン毛内
宣伝美術/北見明子 企画構成/FAP’S企画
進行/小山由美子 進行助手/蛯名里美・塩俵昇大
制作/FAP企画

劇場名/ことにパトス

演目1 留守

演出/河島好江 演出補助/高野翔子
出演/お八重さん=小山由美子 
  おしまさん=金子綾香 
 八百屋さん=高田直樹

 昭和2年、中流家庭の話。主人夫妻が外出して、女中一人が留守番している部屋へ上がり込んだ近所の女中仲間が、その留守番女中の男女関係のツヤ話を聞き齧りの噂話で煽る。
 まんざらでもない当人の女中。そこへ相手とされている当人の八百屋のご用聞きが配達に訪れる。3人三様の早とちり早合点の、でもお互いに全く根も葉もない話での探り合い。一種の艶笑譚だが、他人の心を探る人の心の動きを微細に探る実験劇のような展開。

演目2 秘密の代償

演出/高野翔子
出演/生田是則=城島イケル 
     妻・和子=小山由美子  
      息子・是守=山本和義  
       小間使い てる=元木みづほ

 高級官吏の別荘、女中が内緒で大金をくすねて即日に退職を願い出る。人の好い妻は夫か息子かがその女中に対して何らかの落ち度があったかと早合点し大いに慌てる。
 女中は一切の弁解をせず、密かにイロ仕掛けを施す。その仕掛けを誤解した妻・夫・息子はそれぞれまんまと仕掛けに嵌って500円の大金を持ち逃げされる。三人とも弱みがあるから公には出来ない。これは弱者の智恵による勝ち物語だ。

☆ ☆ ☆ ☆

  以上の2作品は、時代の閉鎖感を何とか突破しようとした女性たちの道徳無視の力強さを感じる。
 一見、巧い演技者たちがキチンと創ろうとする技術があからさまに見えてリアリティが弱い。隣席の若い女性観客たちが大いに笑っていたので、舞台の噛み合わない展開に共感したのなら、この芝居、もっとリアリティのある創り方をしたら、もっと面白く共感ももっと強くなったのかもしれないと思った。
 現代的な解釈としたら、閉塞された人たちの工夫と実力による脱出劇として創られるのかもしれない。
 この舞台は表現技術の巧みさに拘って逆にリアリティを失ってヤヤ白けたのは残念。もっと肉迫して欲しかった。