腐食

観劇日時/14.11.26. 20:00~21:00
劇団名/シアター・ラグ・203

作・演出・出演/村松幹男
音楽/今井大蛇丸 
音響オペレーター/瀬戸睦代 照明オペレーター/平井伸之

劇場名/ラグリグラ劇場

殺人犯の心情展開にはまり込まれる凄さ

 とにかく「凄い」の一語に尽きる。この舞台は何度観たのか? 出演者が変わって上演された舞台を、おそらく10回以上も観ている。だから今日もある程度の予備知識を持っているつもりで客席に座った。
 だが開幕早々そんな意識はぶっ飛んだ。ひたすらその主人公、といっても一人芝居だから、その人物の行動と、それに伴う彼の意識の変転とその述懐なのだが、それは何回も観ているのだから当然に了解しているはずなのに、彼の述懐に伴う意識の展開に同調し変化展開せざるを得ない心境にはまり込んでしまう。
 彼のその心境から離れられないことに僕の肉体もがんじがらめに縛られ尽くして心身ともに疲労困憊する。
 ラストシーン、彼が「オレは救われるんだろうか……」と呟いて刑場へと去り暗転して音楽が軽快なリズムに転調し客席が明るくなると、ようやく僕も生き返る。
 フト、これまでにも殺人犯が述懐する舞台や映画をいろいろと観たことを思い出しながら比較していた。
 生き返って冷静になると細かな疑問点が蘇るのだが、そんなものを引き倒して人間が生きるということが何なのかという根本を突き付ける凄い舞台だった。
 念のためにその疑問点を列挙する。
1、死刑囚の彼の個室に最初に入室する教誨師を同囚として接することの不自然さ。
2、最初の妻殺しに逡巡のない一直線な行動。
3、最初の妻殺しから死刑執行までの時間経過の詳細なリアリティ