終戦6年後の1951年、瀬戸内海のある島での話。20歳の時に広島で被爆した後遺症に脅える栗原学(=清原達之)は、その島で中学校の教員をしている。一緒に暮らす母・ゆう(=上甲まち子)、妹・史(=崎山直子)、母の弟で学の叔父・大浦(=吉村直)の4人家族。
学の教え子・川下邦夫(=真喜志康壮)とその母・きん(=藤本久美子)、その兄・菊夫(=塚原正一)の三人家族。この二つの家族たちの日常生活に中には、常に広島被爆の悪夢が甦る。
学は、卒業したかつての教え子・木戸玲子(=清水美輝)に深い愛情を持ち、玲子も学に強く惹きつけられるが、学は自分がいつ死ぬかも知れないことを自覚しているので、玲子の求愛を受け入れない方が本当の愛情だと思って、いつも最終的には拒否する。だが玲子は逆にそれは学に本当の愛が無いのではないかと悩む。
荒れた中学生の教え子、邦夫は学に反抗しまくる。だが母・きんが原爆の後遺症で命が尽きたときに目覚める邦夫。
この二つの成り行きを巡って、学の友人・新谷正(=岡山豊明)、学の上司・山岡先生(=渡辺尚彦)、同僚で図工の教師・毛利(=矢野貴大)、学の友人で東京で安定したサラリーマンの清水徳一(=北直樹)たちがいろんな形で出入りする。
広島の原爆がこの人たちにもたらした不条理は、物質に対する飽くなき欲望の結果として現在の原子力エネルギーがもたらす福島の不条理の警告として現在にも切実な問題だ。
過剰な現代文明に対する警告としての重厚な舞台は2時間45分を重い空気で包みこむ。……ラストに微かな光明が見えるのか? |