第二次世界大戦の末期、大都会のブダペストからハンガリーの田舎町に強制的に疎開させられて不仲な祖母の許へ預けられた双子の孫の少年たち。
全編、戦争に痛めつけられてペシミックでアナーキィになった世相の中での展開が、祖母との関係、そして小さな町の中での幼い双子の少年との間で描かれる。それは世紀末の絶望的世界を具体的に描写して救いがたい世界だ。だがそんな中でも、二人の少年は協力してあらゆる秩序を無視しても逞しく生きて成長してゆく。
ラストシーンの、閉塞の世界からの脱出が希望の象徴かと思っていたのだが、これが何年ぶりかに会った実父を犠牲にして双子の中の一人だけの脱出だった。残った一人は死んだ祖母の家に戻るのだ。そこでこの物語は終わる。
最後まで物凄い物語だ。人間の歴史の最低の劣悪さの中で、現在の常識である人間性までも無視して、ひたすら生きる意志の力強さに一瞬とも目が離せないようなシーンが続くのだ。
不条理の世界で生き抜く少年たちの行動が、常識からみれば不道徳と言えるかもしれないが、むしろ冷静に冷酷に生きてゆくことにリアリティが強いと同時にシンとした感慨を覚える。
早速、小説を買って読み直した。それほど我が身に深い感銘を与える物語であったが、自分では200%出来ないだろう。そんな智恵も力もない。だからこそ大きな衝撃を受けたのだろうか? |