パン屑の道しるべ

観劇日時/14.10.26. 15:00~16:50
製作/FREE(S)×BRO 企画/マエダケン
 
作・演出/たかはC 演出助手/谷口航季
 
劇場名/東京・下北沢 小劇場B1

不幸な出来事も前向きに考えよう

 タイトルのパン屑とは、ヘンゼルとグレーテルの話で帰り道に迷わないようにパン屑を置いておいたら雀に食べられた。それは悲劇だけども逆に雀に食べさせて良かったと考える思考回路を持とうというコンセプトだと思う。
 14歳の少女の片思いの男子生徒が、彼女の親友と親密になった。失望した少女は見知らぬ闇の世界に紛れ込んだ。そこでは知らない女性が本を読んでいる。そして別の女性が少女をナビゲートしてくれる。 
 だが、その本もナビゲートもナンセンスいっぱいの、ほとんど不条理の世界だ。でもその雰囲気に癒されつつ少女はこの世界に次第に興味と関心を持つ。それは大人の不条理で不合理の世界の展開であった。そのシーンが次から次へとエネルギッシュに繰り広げられる。
 まず、最初は「無意味な会議」という会議。ある集団、それは会社か役所みたいな所で無意味な会議をやっている。たとえば「サザエさんのアニメのタイトル」という議題で、あのアニメの主役はカツオだからタイトルは「カツオ」にすべきだ。という無意味な議論。それらの新しい議題で無意味な会議は延々と続けられる。
 次は先輩の奥様に気に入られた男が奥様に誘われて夫の留守の家で夕食をご馳走になり酔った奥様に無理にベッドに連れ込まれる。急に夫が帰って来て慌てた男は携帯電話を忘れて裏口から逃げ帰る。心配になった男は翌日、先輩の家を訪ねて何とか携帯電話の在処を聞き出そうとする。先輩である夫も誘惑したその妻も、都合良く解釈して男を安心させる。これは落語『財布』の現代版だろう。
 3つ目は女性の身勝手さ、女が自分を思ってくれる4人の男を選抜テストする。それもすべて奇想天外のルールだ。たとえば運動能力では、まるでブラジャーのようなTシャツでラジオ体操をさせて、乳首が見えたらアウトとかそういうバカバカしいシモネタ絡みの、即答力とか連想力とかのシーンが続出し笑いが絶えない。ほとんどがいわゆるコントの世界だ。
 4つ目が自虐の女世界。高見に立ちたがる女性、天然を気取る養殖天然女の存在、複数の男を誇示する軽薄女と、それにのっかる軽薄男たち、その他、いろいろ……
 すべてはナンセンスで大袈裟でバカバカしいけど、それが大人の世界なのだ。少女はそれらの大人の女の世界を見て、どう成長するのだろうか? ナビゲーターはこの世界で見たことは醒めると忘れてしまうと言う。だがきっとこの少女は、大人のダメな世界を垣間見て、親友に彼氏ができたことを自分の喜びに代えることができるのであろう。
 これは、すべての出来事を良い方向に考えを変えるという僕の思考に合う考え方で面白かった。時間繋ぎに偶然観たのだが、評価できる舞台であった。


 出演者/(五十音順)大島祐也・大谷美貴・大平原也・岡崎正紘・黒木美結・
       黒部菜々佳・冨田侑希・末永紗也加・槌谷絵図芽・里璃・永尾宗大・
       マエダケン・宮島沙絵・村上理