餓鬼王

観劇日時/14.10.4. 19:30~20:50
企画/杉吉貢・はらださとみ 

照明/高橋正和  音響/大江芳樹  衣装/アキヨ
美術/杉吉貢  スタッフ/橋本奈於・本間恵・原田ひより
 写真撮影/高橋克己 動画撮影/織田泰之
協力/弦巻啓太・小倉靖幸・小倉信枝・MORIHIKO plantation
お浄め/石川亨信

劇場名/札幌・菊水 モリヒコ プランテーション

オムニバスで演じられたコンテンポラリィダンス

1、白無垢 
 ちょっと洋風な着付けの花魁(=はらださとみ)が道中する光景……後ろから付いて行く男衆(=齊藤智仁)。これは正に花魁道中だ。喜怒哀楽の表情を表さず静かに前を見つめて粛々と歩を進める花魁。
 後を付ける男衆が後ろから帯を引っ張って解くと花魁の上半身は裸になるが、その裸身は洋風な下着だ。たぶん、これは現代を象徴しているのだろうか?
 そのまま二人は何事も無かったかのように通り過ぎて去って行く。杉吉の描く衣装の下半身はまるで提灯のように何重にも重ねた張りぼてのような透けて見えるような和服もどきの着物だった。性を売る、人格無視の唯美的存在。
 嘲笑しているのか諦めているのか賛美しているのか、どうとも取れる笑い声から始まる歌唱(=嘉村美知子)がその花魁の行動を補佐する。馬頭琴・嵯峨治彦とサックス・烏一匹が加わったトリオが、花魁の視覚的美しさの裏面の哀愁を奏でる。

2、地獄坊主
 苦しみ悩むような煩悩の男(=柴田智之)が絶叫しながらのた打ち回る。だがこの苦しみは説明的だ。苦悩の表現というよりは苦悩を説明しているような踊りだ。共感するよりも冷静に観てしまう。

3、菊水心中
 榮田佳子の踊る女の心情。直前の地獄坊主の冷めた感情が尾を引いて意地悪く観てしまうが、さすがに榮田は女の心情が滲みでる。上演時間が短いから感情が途切れる。

4、極楽楽士
嘉村・嵯峨・烏のトリオの軽快でユーモラスな演奏だが、この流れの中では何か異質で乗り切れない。

5、瀕死の蛾
 死に瀕する我(=齊藤智仁)と、その後に着いて行く男女(=河野千秋・櫻井ひろ)はほとんど心中行だ。死に直面するセックス。奇妙な水玉模様の裸身にぴったりの衣装が、性と生に拘る不気味な野生生物を思わせる。蛾を象徴したのだろう。

6、呪縛の舞  東海林靖志と楽士たち

7.地獄絵 はらださとみ・柴田智之・嘉村美和子
 この2篇は同じような繰り返しにしか見えない。少しずつ出てくる心情の説明が如何にも説明的で鬱陶しい。
 全体に、心情を肉体で表現するというよりは、その心情を説明しているような理屈っぽい表現にかなり冷めた目で観てしまう。表現としては失敗だろうと思う。

 何かすべて「地獄坊主」の悪いイメージが邪魔をしているような気がするのと、一つ一つの演目がブツ切りでインパクトが弱いのだった。