月見草珈琲店~Cafe Evening primrose

観劇日時/14.6.29. 19:00~20:20
劇団名/怪獣無法地帯

作・演出/伊藤樹 衣装/大坂友里絵 小道具/忠海勇
演出助手・スウィーツ大臣/長谷川碧 舞台監督/三戸部大峰
制作/伊藤しょうこ・吉川直毅
会場名/より どこ オノベカ

身近な日常のリアリティ

「月見草珈琲店」という喫茶店の従業員たちと、そこに登場する人たちの、主に男女関係が起こす、いろいろな軋轢が展開される。そしてこの喫茶店の二階にある古書店の先代のご主人・増岡さん(=棚田満)が亡くなって3年、今は亡霊となって、長年に入り浸ったこの愛すべき店を見守っている。この店では彼の存在を感じることが出来た人はラッキーとされる。
店長(=田村嘉規)の存在感のなさ、すべてを仕切っているような先代オーナーの息の掛った若いチーフ・益子志摩(=三宅亜矢)、一言多い先輩バイト・斉藤保(=塚本雄介)、新入りバイト・島正義(=足達泰雅)。
志摩との長年の友情に男関係でヒビの入った女性客・美園聡子(=長麻美)との確執の展開。
カップル客の男(=佐藤真一)の身勝手で別れざるを得ない、一見強そうな相手の女客・みづほ(=新井田琴江)の別れ話。その破局の結果と若いバイトとの新しい関係、店長のだらしない妻・麻子(=伊藤しょうこ)の破滅的な日常などなど……。
実際の喫茶店の客席をこの芝居の客席として、カウンターの中と客席前そして最前列のテーブル席が舞台となって演じられる。
些細で細やかな日常が暖かくユーモラスに描写されて、それが観客の身近に起こるリアリティが印象的だが、出演者が勝手に可笑しがって観客に笑いを強制するかのような表現はちょっと引いてしまう。
思い出した、96年の4月、六本木の自由劇場で観たアゴタ・クリストフ作の『ジョンとジョー』がやはり喫茶店を舞台にして観客はその喫茶店の客席に座って観るスタイルであった。
この劇場は単なる平土間のスペースで、そこを喫茶店に見立てて演じた吉田日出子さんと柄本明さんの二人芝居であり、一種の文明批判劇だが、当時の感想を読み返すと「ほとんど落語の世界で、とても洒落た大人の芝居」と書いてあった。未だに強烈な印象が残っている。