THE BEE

観劇日時/14.6.14~15:35
劇団名/風蝕異人街

原作/筒井康隆『毟りりあい』
共同脚本/野田秀樹・Colin Teevan
演出・照明・美術/こしばきこう 照明/佐藤律子
音響・宣伝美術/山本美里 制作/平野たかし
劇場名/シアターZOO

白昼夢の儀式のような不気味な暴力の連鎖

6歳の息子の誕生日プレゼントを買って少し帰宅が遅くなったエリートサラリーマンの井戸(=三木美智代)は息子とその母の待ちわびる自宅の目前で警察の規制線に阻まれた。
犯罪容疑で留置中に、留守宅の妻の不倫疑惑に怒り狂った労務者・小古呂吾郎(=斉藤秀規)が、警官を射殺して脱獄し、井戸家の留守宅に進入して妻子を人質に立て籠もっているのだ。
マスコミのマイクとカメラに取り巻かれた井戸は、百百山警部(=朝田敏之)に、自分が犯人の妻子の説得に行くことを申し出るが、警察は面子に掛けて許可しない。
井戸は隙を見て一人の警官をバットで殴り倒し拳銃を奪ってマスコミに案内をさせて犯人の留守宅・小古呂家へと入り込み逆に立て籠もる。
小古呂の妻(=千念達正)はストリッパーで、夫の吾郎をすでに見限っているが、6歳の息子・六郎(=上村聡)は熱愛している。偶然に六郎も今日が誕生日だ。
井戸は百百山警部と取り引きし、警部を介して吾郎と電話で通話する。吾郎は息子の六郎にも偶然井戸と同じプレゼントを盗んで用意していた。
ここからは全て犯人の吾郎の留守宅での、犯人の妻と拳銃を擬した井戸との、息子六郎を挟んだ駆け引きになる。
夜になると井戸は妻に食事の用意をさせる。夜に並んで寝るとSEXをする。朝、起きると妻は井戸の上着にアイロンを掛ける。井戸は洗顔し、3人で妻が準備した朝食を攝る。夜になる。この繰り返しが延々と描かれる。
その中で井戸は妻子解放の要求の為に、吾郎の息子の指を一本ずつ切断して、百百山を通して留守宅に届けさせる。すると逆に吾郎は井戸の息子の切断した指を送り返してくる。ついには妻の指も1本づつ切られ、最後には妻は立ち上がれなくなる。
この儀式のような白昼夢のような、エスカレートする暴力の連鎖が不気味に延々と続く。
エリートサラリーマン役は女優であり、犯人の妻と6歳の息子は二人とも成人男優である。SEXの後には井戸は拳銃を天井に向かって発砲し、トランペットの祝曲がなり響く。
いずれも抽象的で様式的な表現方法だが、現実的であり得ないようでいて、逆に不気味な圧迫感が強い。「風蝕異人街」独特の様式化がピタリと合った凄まじい舞台であった。少々の疲れも吹っ飛び爛々と見据えた1時間半であった。
ただBEEの意味が不明だ。朝食の時に羽音が鳴り響き井戸がそれを捕まえるという動きがあるのと、ラストに舞台いっぱいに蜂の大群が投射されるがそれは静止画であり徐々に拡大されて、最後にはモザイク様の画面になって溶暗するのだが……