蒼ざめたサイを飼う少女
~マダム・ラボの数奇な履歴書~ 

観劇日時/14.5.31,  20:00~21:15
劇団名/風蝕異人街
作/寺山修司  脚色・構成・演出・照明・音響操作/こしばきこう

プロジェクター操作/平野たかし 美術・宣伝美術/山本美里
ダンス振付/大田麻美 受付・スタッフ/三木美智代
出演/マリアA・マダム・ラボ=山本美里 マリアB=鈴木涼子
マリアC=岡谷友美 マリアD=国門綾花 マリアE=大田麻美
マリアF=恒本寛之 少年 寺山修司=上村聡
紙芝居屋・ローソク屋=平野たかし 美しいサイ=田村嘉規
劇場名/阿呆船

「蒼ざめた」「サイ」「マダム」「ラボ」とは?

タイトルとサブタイトルには、それぞれに4つの具体的な名詞を並べているのだが、それが並ぶと逆に何を意図しているのかが良く分からなくなる。不思議な抽象的なタイトルだ。「蒼ざめたサイ」とは何の謂いなのか? 「マダム・ラボ」とは何の謂いなのか?
一人の少女Aが自己を意識した15歳から60歳までの自叙伝であり、劇ではなく、立体的抒情詩である。
一人の少女が悲壮感の強い絶叫調の何を言っているのかほとんど分からないような台詞を全くリアルじゃない声と体の動きで表現し、舞台隅の檻に閉じ込められてラストの直前まで全く身動きのしないサイを背景に、他の5人の少女たちが追い駆けて一人の女の生涯が展開する。蒼ざめたサイとは、少女にとって永遠の謎である性の対象なのだろうか? するとマダムとラボとは成熟した女性の性の象徴を意味するのであろうか?
全編、映像を多用して感覚的に誇張された舞台表現であり、それが「風蝕異人街」の特異性であり魅力なのであろう。
エロスの表現と言うが、「エロス」とは異性間の精神的な愛であり、それが転じて、人間の生々しい生のエネルギーを表すことになるのであろうから、少女が半裸になったからと言って、それが必ずしも「エロス」とは言えないだろう。何か自己満足にしかなっていないようにも感じられる。