樫の木坂四姉妹

観劇日時/14.4.23. 13:30~16:15(途中休憩15分)
劇団名/俳優座
公演形態/旭川市民劇場4月例会

作/堀江安夫 演出/袋正 美術/内山勉 照明/森脇清治
効果/田村けい 衣装/若生昌 方言指導協力/長崎市民劇場
舞台監督/関裕麻 制作/山崎菊雄
劇場名/旭川公会堂

人災としての悲劇

2000年ころの長崎、旧家に暮らす75歳くらいの長女・葦葉しを(=中村たつ)、73歳くらいの次女・ひかる(=岩崎加根子)、そして4女のゆめ(=川口敦子)、ゆめの双子の姉・まりは20歳前に原爆の後遺症で夭逝した。
音楽の才能があったまりの死を、ゆめはずっと負担に思っていた。だからせめてピアノを買ったのだ。
原爆と平和運動を取材しているアマチュアカメラマン・洲崎(=武正忠明)は家業を擲ち家族と別れて記録写真の撮影に打ち込んでいるが、モデルとして交際が出来た三人と親戚つき合いをしている。
55年前、一家は平和であった。父・駒吉(=河原崎次郎)、母・せい(=平田朝音)、そして兄・幸雄(=脇田康弘)さらに若い頃のしを(=若井なおみ)、ひかる(=小澤英恵)そしてまり(=齊藤奈々江)と双子のゆめ(=森根三和)の7人家族。
兄は戦死し、8月9日が長崎の一家を含め、いっさいを廃墟と化した。それから55年、3人の姉妹には様々な遍歴があったが、すべて原爆の影響から逃れることは出来なかったし、3人の心の中にはいつもまりのことが離れなった。
重病を患ったひかるの元へ、突然、アメリカ人のかつてのハズバンドから会いたいという便りが届く。しをの差し金だ。
ひかるは心情的に屈折していた。それも結局は原爆後遺症のせいだが、彼女はひたすら強気でそれを隠して生きてきたのだが最近では姉・しをや妹・ゆめに頼るようになっていった。
それを知った姉・しをが最後に安らかな死を迎えさせようと手を回したのだ。頑なで強気一辺倒だったひかるも姉の気持ちを知ってやっと安らかな心境を取り戻す。
戦争と原爆という人類最悪の人災を、丁寧にじっくりと描いて見せる長編悲劇である。
悲劇とはまさに人間の意志では変えることの出来ない宿命の歴史であろう。だから時間のスパンも長いし、関わる人数も多いわけだ。
それに対して運命とは人間の意志で代える希望の持てる展開だと思う。だから運命に動かされる人間と社会の展開は喜劇としても表現できる可能性が高いのだと思う。
出演者たちの演技は、さすがに日本人を演じるとリアル感が強い。無理なく登場人物たちが身近に感じられて違和感が少ない。これこそ個人の運命では如何ともしようのない、僕の規定する、いわゆる宿命の悲劇であろうか。