水葬物語

観劇日時/14.4.19 19:00~20:20
劇団名/北翔舞台芸術

上演回数/3年目定期公演vol.6
作/堀越真 演出/森一生
照明/倉田麻奈 宣伝美術/女池祥子
劇場名/ポルトホール
出演/児玉大樹・女池祥子・茎津湖乃美・田中亜希美・湊谷優

自意識過剰な男の悪夢

自意識過剰な男が、美女たちに囲まれて閉じ込められようとする耽美的な悪夢を表現した物凄いお話……
おそらく美男美女たちの夢の話だと思われるのだが、肝心の男は小太り短足で、とうていこの物語の人物とは思えないのだが、逆に考えると、それを自覚した悲運の男が思い込んだ哀切な心境の表れの夢物語だとも受け取れる。
その男が勝手に相愛だったと夢想する女、男に夢想されたその女を無条件に慕い続けてその身代わりになりたいと熱望する若い女。
殺されたのか自死したのか焼け死んで幻の湖底に眠る男は、その若い女の兄であった。
残されたその妻は、全身に火傷を負って黒づくめの衣装に顔も黒いベールで覆い、それ以来、一日中酒を飲んでいる。
夢想の男の悪夢の中では、自分はその黒づくめの女の息子だから、若い女は彼にとっては叔母になる。その叔母はホテルの支配人によると彼を愛しているのだと言う。
つまりすべては男の自分勝手の悪夢の中というか夢想そのものなのだった。
人生すべて、良く言えば夢の中の自己満足、あるいは悪夢との狭間の中に生きる耽美の世界なのだと言うことなのかもしれない。
それにしては、舞台装置がこの物語に対して貧弱だ。ホテルのベランダ、幻の湖の後の湿地、女の部屋の大鏡など……すべて夢の中の世界としては、みすぼらしい安下宿のような雑な現実に失望する。
学生の演技の勉強の場だからというのは弁解にしか過ぎない。入場料を取って一般公開するからには、それ相応の意識的な舞台創りが必要だ。そういう戯曲の舞台世界を創ったのだから……と思う。