映画  茜色クラリネット

鑑賞日時/14.4.10. 13:00~14:20
劇場名/シアター・キノ

大人になれない身体で、心だけ大人になったら……

思春期の女の子の、大人になりたくない、でも大人にならざるを得ない、その感覚を、身体は子どものまま心だけ大人になって行くという、一般的には身体は大人になるのに精神的には子どものままという、普通の感覚とは逆の、微妙に違和感のある表現で、思春期のある特定の心理を的確に映像化した佳編。おそらく子どもたちが出演人物を演じるので視覚的には身体が子どものままでないと表現できないと言う制限を逆手にとった面白い映像表現になったのだろうと思われる。
特に地元の琴似の風景をリアルに或いは象徴的に映像化しているのは技術的に高い評価が出来るから、一般の公開映画としても充分な価値があると思える。
子どもの夢を食べるニヒリズムの怪物・トニ子や、夢の場面の処理などは映画的にも魅力的な表現であり、中学生・高校生たちが創ったとは思えない出来だと思う。しっかりとした作品として完成度が高く、充分に鑑賞に耐える出来上がりだ。
物語も、その年代の少年・少女たちが感じる、大人がすでに捨て去った、でも思い出させる大事なシーンの積み重ねであろう。大人とか子どもとか関係のない、ある年代の夢を思い起こさせる一遍であり、もう一度観たくなる魅力的な映画であった。