演 目
友 達
観劇日時/13.11.8. 20:00〜21:10
劇団名/WATER33-39
作/安部公房 演出/清水友陽 照明/清水洋和 
舞台/中川有子・ワタベジュンイチ 衣装/高石有紀 ヘアメイク/佐野美樹
制作/梶原芙美子・岩田知佳・小林テルヲ
劇場名/シアターZOO

狂気の善意

 一人暮らしの男(=田中春彦)の部屋に、突然見知らぬ8人家族(=父親・赤坂嘉謙/母親・高石有紀/祖母・佐井川淳子/長男・石川哲也/次男・大槻紘照/長女・畑山洋子/次女・中塚有里/末娘・楢有希子)が訪れる。男の全く知らない人たちだ。家族は全員が男の親しい友人を名乗る。
 困惑する男は家主(=平岩桜)を通じて警察に届けるが、やってきた警官たち(=後藤拓磨・高野和也)は家族の言い分を信じ、男に直接の被害がないのは警察の関与する事件ではないと言って去る。
 男の婚約者(=成田愛花/Wで池田優香)も彼を信じないどころか、彼が何かを隠しているのじゃないかと疑う。彼女の知り合いの事件記者(=石川亨信)さえも、面白おかしく過大報道をしようとする。
 まさにこの8人家族は男の狭い部屋に居座って住まうのだ。一見、家族たちに悪意は見えない。あくまでも友達が彼の好意によって訪ねてきたというのだ。居場所のなくなった男は、玄関の靴箱を改装した檻に軟禁させられる。
 いつの間にか、自覚のないままに不条理の世界に追い込められる悲劇が、実に巧妙に喜劇として描かれて、自分がもしこの境遇に会ったらどうしようかって思わざるを得ない。
 この男の対応は弱いだろうとは思うけれども、実際にこの状況にぶつかったら相手の善意を信じて、同じような対応をするのだろうなという一種の恐怖を感じ、それは
 現在の政治状況の象徴とも思われる。
 こういう舞台って現実感がとても大事で舞台に嘘が感じられると話も舞台の存在自体も架空の存在になってしまうので、そうはならない表現技術も大事な要素だ。
 その視点でみると、細かく目配りをしているのは感じとれるのだが、ところどころで引っかかる部分がある。
 その第一が演技者のオーバーアクションだ。リアルに現実の断面を表現してこその効果だと言うことは百も承知のはずなのに、所々のシーンで客受けを狙ったとしか思えないような嘘っぽい大芝居が散見する、具体的には家族の長女とトップ屋と祖母の三人。
 ラストシーンで男は履き物入れに作られた檻に閉じこめられるのだが、この檻は余りにもチャチで、この男だったら簡単に壊して脱出出来そうだ。ということはそれをやらないこの男は自ら進んでこの状況に閉じ篭ったのじゃないのかという意図も感じられる。
 ラストで檻に閉じ篭った男を見ながら8人の家族が並んだ時に、父親が今朝の新聞の記事の見出しを次々と読み上げる。ト書きによると、上演当日の生な新聞記事を読み、どの記事を読むかはその父親俳優の選択だそうだ。つまり、そこにこの舞台を現在に上演する、上演させる作者の大きな意図が強く感じさせられるのだが……