演 目
ベッカンコ鬼
日時/13.11.8. 16:00〜17:15
劇団名/座・れら
原作/さねとうあきら 脚色/ふじたあさや 演出/鈴木喜三夫 美術/高田久男
照明/鈴木静悟 音響/西野輝明 音楽/YUKII 篠笛・打楽器/つくね
衣装/木村和美 道具/戸塚直人 振付/花柳喜衛文 振付協力/青坂章子
演出補/信山E紘希 演出助手/Amy 舞台監督/寺沢英幸 
制作/戸塚F・青木通子 ちらし絵/中野邦昭 手話通訳/舞夢サポーターズ
劇場名/やまびこ座

狂女の、悲哀の踊りに括目

 盲目の少女・ゆき(=小沼なつき)は盲目のために苛められその都度、猟師の父(=櫻井健作)には言い訳せずに亡き母のお墓参りをせがんでいた。
 そんなある日、父はゆき一人だけを母の墓前に残して猟に行く。墓番のベッカンコ鬼(=前田透)は、ゆきを一目見て、その美貌に魅了され力ずくで監禁する。ベッカンコ鬼はその鬼らしくない醜悪な容貌に似合わず、大人しく優しい鬼だ。
 目の見えないゆきは、鬼を恐れずひたすらすべてを拒否する。だがベッカンコ鬼は一途にゆきの機嫌をとる。
 その純情な鬼にほだされたゆきは、鬼の真意と愛情を受け入れる。やがて鬼は山母(=竹江維子)にゆきの開眼の方法を尋ねると「谷に生えてる竜の目という草花の根を絞ってゆきの眼に垂らすと良いが、鬼の命は保証されない」と宣告する。
 鬼は自分の命を賭してもゆきの目を開かせたい。一方、行方不明になったゆきは鬼に浚われたと信じて探す父親は、偶然、竜眼草を探す鬼を見つけて銃撃する。
 ここまでは想定範囲内だ。様々なアレゴリイが考えられる。だが瀕死の鬼が、二人で暮らす、ゆきの留守宅にたどり着き、それを追った父親が娘と再会する場面からシーンは急速に変化する。
 すべて誤解と不理解から起こった悲劇ではあるのだが、誰も理解できない鬼との純愛を失ったゆきは狂女と化して、能のように踊り狂う、それが圧巻だ!
 これは民話風なおとぎ話を越えて、鬼と化した人間の宿命の執念とも言えるべき哀しくも愛おしい狂気だった。ゆきを演じた小沼なつきのその狂気に圧倒される。
 初め単なるおとぎ話を想像していた期待を遙かに越えて、人間の存在の根源までをも訴える凄い舞台を魅せて戴いたのだった。
 他にコロスとして信山E紘希とフクダトモコが出演。