演 目
あとは野となれ山となれ
観劇日時/13.11.5. 19:00〜20:45
劇団名/トム・プロジェクト・プロデュース
公演形態/全国巡演 深川公演
作/水谷龍二 演出/高瀬久男 美術/中川香純 照明/五十嵐正夫
音響/原島正治 衣装/竹原典子 舞台監督/井関景太 宣伝美術/立川明
宣伝写真/塩谷安弘 宣伝ヘァメイク/若林あかね プロデューサー/岡田潔
企画制作/トム・プロジェクト
劇場名/深川市・文化交流ホール み・らい

平凡な女性が新しい人生に強く立ち向かう姿勢に盛大な拍手が〜

 夫の浮気や30過ぎのニート息子を見限った55歳の主婦・万里子(=竹下景子)は、離婚覚悟で、以前から大フアンだった大衆演劇の千羽一座に飛び込んだ。
 だがそこには超独裁の座長・千羽旭(=宇梶剛士)と、座長の独裁に耐えられず全員が去ったあとに、1週間前に新たに入団した若い女・りん(=岸田茜)、彼女はアメリカン・ミユージカルの夢が破れて、とりあえず千羽一座に、身元を哀れに偽って飛び込んだだけだったが、その2人しか居なかった。
 この導入部は、わざとらしい大仰な演技で、大衆演劇の舞台としての演技ならば、それもありかなって思うけど、これは千羽座の日常の遣り取りだから、百歩譲って、その舞台演技が日常にも出てくる象徴だとしても、やはりそのオーバーアクションは、気持ちが悪くなるような感じで、ちょっと観ていられないかなっていう気持ちが強かった。
 だが物語、といっても3人の行き違いが微妙に滑稽に、だが真摯に前へ進もうとする展開なのだけど、快く観ていられるような描写に変わって進歩してくる。
 大衆演劇を、チャップリンと長谷川伸との比較で、二人の作品を頻繁に引用して、進められる。その引用がこの物語の主題にフイットして、さすがな作劇術だなって面白い、引き込まれる。
 新しい人生に向かって何の勝算もない女一人が立ち向かう姿、要所要所で竹下の心境独白が舞台中央で客席に向かって語られると、スポットライトが彼女に絞られ、客席からは、その度に盛大な共感の拍手が送られる。
 観客が一緒に楽しむ、そういう芝居であった。健全で力強く、そして一種、滑稽で危ふい人生への再出発の発端の物語で、これが大衆演劇なのだろうか。