演 目
神露淵村夜叉伝
観劇日時/13.10.19. 14:00〜15:45
劇団名/劇団 新劇場
公演回数/第16回定期公演
作/石山浩一郎 脚色・演出/菅村敬次郎
舞台監督/遠州まさき 装置/HUKUDA舞台 照明/鈴木静悟
音響/西野輝明 小道具/Shin・齊藤誠治 衣装/川口まゆみ
衣装協力/劇団 海鳴り 方言指導/本山節彌 
宣伝美術/齋藤友彦 制作/劇団 新劇場
劇場名/やまびこ座

時代も場所も越える人間の心のありよう

 第二次世界大戦の終わり頃、九州の片田舎、神露淵村、人口400人前後、若い男は全員出征して残るのは老人・女・子供ばかり、ただ一人村長・椎葉惣之助(=中島利克)の一人息子・惣一郎(=濱道俊介)は出征のとき、列車に乗ろうとしてホームから落ちて大腿骨骨折の重傷で本人はもちろん村長も甚だしく名誉を傷付けられている。 
 息子・惣一郎が恥を悔い首吊り自殺をしようとして恋人・一木みどり(=栗原聡美)に必死に止められたとき、空襲が襲って村役場は炎上崩壊、逆上した村人たちのところに、負傷した米兵(=土岐周平)が落下傘で倒れているという知らせが入る。テンションの上がった村人たちは武器を持って鬼畜米兵(当時の戦意高揚標語の中にある語句)を槍玉に挙げようと勇み立ち狂気に充ちる。
 駐在の巡査(=小川貴大)は、捕虜の虐待は国際法違反だと言うが、戦争で身内を失った村人たちは納得しない。
 名誉回復を計る村長は息子にこの米兵を殺害することを命じる。取り囲む村人たちの中で動けない負傷の米兵を短刀で突き刺そうとする息子……目と目が合う二人……結局、息子は刺せなかった。惣一郎は結局、夜叉になれなかった人間だった。
 実は恋人も報復論者だったが、この恋人の本当の意味の人間としての男らしさに惚れ直す。ベタな結論だが、ここに真実の強さがある。
 「フルネーム」とか「ザ・ビッグ・ベストディ」とか当時は絶対に、ましてやこんな片田舎では使わる筈のない、当時は敵性語と言われた英語が出てきたり、男子は現代的な調髪で女子も現代的な髪型だったり、とてもアナクロで時代考証は滅茶苦茶だけど全く違和感はない。
 映像の劇は物語が予定調和だから、完全にリアルに時代考証が出来ていないと感動が削がれるけれども、舞台は生身の人間が演じるのだから、多少の時代錯誤があってもリアルな感覚は凄まじい。それがライブという生の舞台の最大最高の魅力なのだ。今日の舞台では強くそれを感じた。これが「ザ・新劇」の魅力なのか……
 その他の出演者。新井田廣・今野史尚・齊藤誠治・斉藤和子・吉田輝志子・
安藤抄弥・山根義昭・高野吟子・長岡登美子・小山由美子・武田有加・他6名