演 目
パレパーレ星の新しい生き物
観劇日時/13.9.29 13:00〜14:20
劇団名/札幌ハムプロジェクト企画
公演形態/日本縦断興業 札幌プレ公演
脚本・演出/すがの公
劇場名/@すわ(いいかげん居酒屋)

無国籍で童話的な表現の、深い物語

 8歳のパレパーレ(=小川しおり)は精神を病んで入院する。その病院には88歳のペルペルペ(=彦素由幸)が居る。ほとんど廃人みたいな老人だが絵が巧いらしい。パレパーレは絵が好きだったが思うように描けなくなってそれで精神に異常を来したらしいのだ。
 パレパーレの父(=木山正太)は売れない画家で生活のために軍人となって殺人を仕事としている。母(=天野ジロ)は生活のために看護師となり偶然この病院に勤めていた。
 パレパーレには3つの裏の性格があって怒り・好奇心・研究心など、それぞれが一瞬の早変わりで登場する、もちろん舞台上の客の目の前で衣装を取り替えるのだが、それが不自然ではない。ペルペルペも変身する、性格よりも年代だ、10代の少年時代に形が変わると当然に心も少年に戻る。
 二人はパレパーレの主導権でパレパーレが話を創りペルペルペが絵を描いて絵本を創ることで、二人の新しい生きる魂を得ようとする。父や母の存在を感じながらパレパーレは裏の感情を感じ抑制しながら成長する。
 生きるために他人を殺す、あるいはゴキブリさえ殺す、カラスは邪魔物あつかいする、そんな生活を生きて、パレパーは人生を学んでいく。
 ペルペルペは死出に行く、このシーンが圧巻だ。今まで使っていた舞台装置を解体して新しい世界へと飛び立つ宇宙船を組み立てるのだ。客観的にみるとチャチだが、この経過を観ている観客には完成された喜びが強く感じられる。
 人間はなぜ生きているのか、これからどう生きていけばいいのかという根本的な哲学が提示されている舞台なのだが、表現法にためらいというのか難渋する独り善がりの強制みたいなものが感じられた。
 それと特にピエロのようなパレパーレの衣装の突飛な必然性は考えさせられる……おそらく無国籍で童話的な雰囲気は名前からも感じられるからだ。パレパーレとペルペルペは覚えにくいのだが、僕はジョバンニやカンパネルラを思い出していた。
 それと特筆するべきは、この狭い、天井の低い居酒屋の空間、座布団の席は10人は入れるかどうか、壁に沿った箱を並べたような椅子席は3・4人、今日は僕を入れてたった4人の観客だったが、こういうスペースでもやろうと思えば、こんな素敵な演劇が出来るんだと思うと何とも言えない興奮が湧き出す感懐だった。
 もう一つ、その他大勢の登場人物や動物などが片手遣いの人形で演じられたことだ。すべてその場面に登場していない俳優たちが演じるので、総計4人で上演しているのだが、舞台上で衣装を早変わりするのはもちろん、照明の変化や装置の転換も物語の流れの中で舞台上で何気なく行われて、全く違和感を感じないのも不思議だった。