演 目
酔っ払いと椅子と宇宙人と
観劇日時/13.9.25. 20:00〜21:18
劇団名/シアター・ラグ・203
上演回数/Wednesday Theater Vol.17 再演
作・演出/村松幹男 音楽/今井大蛇丸 
音響オペレーター/村松幹男 照明オペレーター/瀬戸睦代 
宣伝美術/久保田さゆり
劇場名/ラグリグラ劇場

中年男の幻想のひととき

 終演後に渡されるフライヤーを見ると、ちなみにこの劇団は上演前には内容についての宣伝告知をしないのだが、その終演後に見たフライヤーによると、主演の平井伸之さんが「この芝居は登場人物がすべて良い人である」と書いている。
 演劇とは葛藤の過程を描くことだと規定する僕からみると、良い人ばかりの物語では葛藤が起こらないと思われる。
 起きるとしても、それはその人物の心の中で起きる自己の心情の葛藤だ。だからそれは一人芝居になる。こ舞台も当然そうなっている。つまり酔っぱらいの過去・現在の心の葛藤だ。それがこの男の酔ってみた夢として描かれる。
 ところが、僕の意に反して、それが実に面白いのだ。宇宙人に逢うと言う荒唐無稽の設定だが、夢の中のことだとすると全く無理がなく、特に宇宙人が日常的でリアルな会話する場面では、初対面の宇宙人がヘッドホーンを男にかけて3.2秒でこの男の脳内のすべてをコピーするという設定は説得力が強くて納得させられ、巧妙な詐術に乗せられる。
 結局はこの男の、現実の柵(しがらみ)の苦しさや昔の夢との葛藤、そして一瞬の儚い憧れへの逃避など、酒と家族と満天の星空に癒される中年男の哀歓が描かれるのだが、それがリアルであるだけに真に迫って人生肯定の安らぎを感じて暖かい楽しいひと時であった。
  最後にちょっと出る、迎えに来た妻が若すぎて、17歳の娘が居るとは思えないのがちょっと気になった……
宇宙人=田中玲枝 妻=吉田志帆