演 目
ザ・ダイバー
観劇日時/13.9.22. 19:00〜20:20
劇団名/劇団アトリエ
上演回数/第10回公演 名作劇場3
作/野田秀樹 演出/小佐部明広 舞台/上田知 舞台デザイン/川ア舞 
照明/相馬寛之 音響/渥美光
衣装/佐藤紫穂 宣伝美術/小佐部明広 当日スタッフ/平瀬学
劇場名/シアターZOO

様式美とリアリティ

 不倫の挙句、殺人を犯した闇の心情を持つ女(=柴田知佳)は、自分が源氏に愛された六条御息所だと思い込む。というか思い込まざるを得ない心境に追い込まれるというのか? 主治医である精神科医(=小山佳祐)は、彼女の深層心理を探るべく彼女に深く寄り添う。それは病を治すと言うよりは、人の心の奥底を覗き見るという行為の象徴的な行動とも考えられる。つまり女の心の奥へと潜り込むダイバーと言うのだろうか。
 光源氏(=有田哲)や頭中将(=伊達昌俊)や、現実の検察官(=有田哲)も巻き込んで女の心は変転とする。これは物語と言うよりは人間の心の微細な動きの経過の描写だとも思われる。
 だから、この舞台の表現は様式美を大事にしたと思う。様式美によって心の変転を表現することが大事なのだと考えたのだと思う。そういう意味では成功していたのかもしれない。だが肝心のこの女の心の変転にリアリティが感じられないのが物足りない。何か怒鳴り合っているようなイメージが強いのだ。ダイレクトに訴えているような感じが強い。
 11年5月の『風蝕異人街』の、この作品には様式美と同時に、そのリアリティがあったのだが、今日の舞台は、せっかちに形を強く打ち出したような感じが強かったのだ。