演 目
獏のゆりかご
観劇日時/13.9.21  14:00〜15:50
劇団名/北翔舞台芸術3年目
上演回数/試演会Vol.4
作/青木豪 演出/村松幹男 舞台監督/信山紘希 音響/神崎麻梨香 
照明/倉田麻奈 会場/市川篤
協力/北翔舞台芸術一同
劇場名/ポルトホール

様々な夫婦の共通する在り様

 地方の小都市にある廃園寸前の市立だがボロ動物園。復活を賭けて近隣の動物園からメスの獏・ユメコを輿入れさせて、唯一残った人気者である獏・ユメゾーの後継者を期待する。
 だが高齢のユメゾーは腹膜炎で元気がない。今日は市内の子供たちを集めてユメゾーの誕生会を行うべく準備中だが,担当の女性飼育員・岡田(=勝俣美咲)は落ち着かない。岡田は40半ばだが11歳の男の子を持つシングルマザーで、獏の飼育一本の20年だった。
 若い小森(=中西大樹)は同僚の若い女性・那須(=滝田千穂)にアタック中だが自己本位が丸見えで、那須の色良い返事が貰えない。
 40過ぎて独身の副園長・菅原(=鹿内康平)は盛んに岡田に告白するが、岡田は煮えきらない。
 そんな時に突然、越野(信山紘希)が来る。彼はフリーのカメラマンで実は元・岡田の亭主で子供の父親だ。2・3日前、偶然に街で岡田に出会い、意を決して訪れ復縁を申し出たのだ。
 そこへセレブな中年婦人・立川(=山崎亜里紗)が現れて小動物を逃がす騒動を起こす。彼女はやはり11歳の男の子の母親でその子は猫を虐殺し補導されている。
 岡田の息子の動物虐待を母親が目撃したことがある。
 動物園に無断で白鳥の羽を集めるビデオ屋のアルバイトの男・江藤(=平井伸之)は動物園の規則違反で取り調べられるが、立川と同じマンションにいることから、立川の夫婦間の事情を知っている。立川の夫は資産家の市会議員だが家庭を顧みない。
 ちょうど独立してペットショップを開業しようとしていた飼育員の宮村(=宮崎僚也)は江藤の父親がマンション経営と知って空部屋の斡旋を依頼する。
 市当局は廃園に向かって人員整理を始めているという噂が流れている。
 みんな浮き足立っている。そんな時、唯一の希望であるユメゾーが死ぬ。岡田は絶望のどん底だ。何も考えられない。その時、大学の動物学教室から血液検査の結果、ユメコ懐妊の電話が来る。
 こういう大人の込み入った家族の男女関係や親子関係と、廃園という社会問題に絡んで、最後の最後まで希望のない話を、学生たちは卒なく見せる。ところどころに幼さの見える部分も在るのだが、それが決定的に破綻しない。
 この学生である北翔舞台芸術は常にそのような問題意識を持って、将来の演劇創造という職業に向かっているのだ。札幌というか北海道にもそういう新しい進路が長年掛かって徐々に出来つつあることが頼もしい。
 舞台装置が、廃園寸前ということで雑然としているのはいいのだが、いかにも幼稚な造りなのが気になった。幼稚な造りとうらぶれた感じとは全く違う。