演 目
エンギデモナイ
観劇日時/13.8.25. 14:00〜15:45
劇団名/演劇ユニットイレブン☆ナイン
作・演出/納谷真大 照明/上村範康 音響/奥山奈々
美術・舞台監督/上田知 衣装/小林泉 ビデオ撮影/小路篤志
宣伝美術/小島達子・江田由紀浩 
プロデユーサー/カジタシノブ
その他大勢
劇場名/コンカリーニョ

虚々実々のメタドラマ

 エンギデモナイというタイトルは、演技と縁起との二面を表現したいという掛け言葉なのだろう。
話は単純だ、ある劇団の稽古場で様々な試行錯誤が展開する。作者で演出の納谷真大は絶対独裁者なのだが、彼が不在の時には不満不服が噴出したりする。この舞台では出演者は本名で呼ばれる。もちろん芸名であるのかもしれないのだが。
 妹が好きな男と結婚したい状況にある時の兄の気持ちを知るために、納谷は妹と同棲中の男に会おうとするシーンを中心に物語が進行する。メタドラマだが、僕が考えるメタドラマとは、演劇を使って演劇を解明する手法とでも言おうか。
 最後には、演出者不在の自主稽古でこの稽古場のビルの管理人の山下澄人が、結婚を控えた妹の、兄の立場を偶然に自分がその位置にいることからエスカレートしてリアルに演じるのだが、管理人は全くのド素人という設定だから、一々プロンプターが付くのだが、これを山下が演じるのだから混乱する面白さが大きい。
 演技を表す為に、わざと抽象的な設えで、目立つのは空中に乱雑にぶら下げられた20脚のパイプ椅子と扇風機・脚立などだ。
 開幕前から舞台では16人の出演者がストレッチ体操をやっていたり、開幕一番、裸の舞台奥の扉を開けて、外の風景を丸見えにさせて登場する。あるいは上手の扉を開けて外の風景を露わにして退場する。架空の舞台と現実の世界とを対比させる。
物語に関係のない登場人物がコミカルな演技やアクロバチックな体技を演じたりして雰囲気を出したり、一つの人物を複数の役者が演じたり、リアリティの無い平板な発声をしたり、納谷と納谷を演じる出演者(=江田由紀浩)は顔を白塗りにしたり、裸になったり、創られた劇の世界と現実の世界との対比をより強く表現しようとする試行をする。
 演技とリアルとの関係を男女関係の縁起に絡めて考えてみようという趣旨を抽象的に表現してみようという野心作だが、物語自体に深い意味は無く、縁起の部分に囚われて、物語の部分が薄くなってしまった。
 むしろもっと違う物語の中で、演技の虚々実々の本質を探ってみた方がより強く訴える舞台ができたのではなかったかと思う。05年に上演された舞台の方が素直で面白かったと思う。今回のは凝り過ぎて混乱した。
 上記3人以外の出演者
  杉野圭志・小島達子・明逸人・大川敬介・石川藍・上總真奈・小林泉・澤田未来・生水絵理・塚本智沙・廣瀬詩映莉・安瀬雅俊・まさと。