行事名
教文演劇フエスタ短編演劇祭「TRY」
観劇日時/予選A 13.8.17. 14:00〜16:00
     予選B 13.8.17. 18:00〜20:00
決勝  13:8.18. 14:00〜16:20
審査員/橋口幸絵・泊篤志・鹿目由起
劇場名/札幌教育文化会館小ホール

 選抜結果は予選ごとに、各劇団の得票数を紹介する。
観客は、途中入場者と途中退場者に投票権はなく各ブロックとも4劇団全部を観た人だけに投票権があり一人2点を持つ。でも一つの劇団に2点を入れても合計3点以上でも無効となる。1点だけ入れるか、別々の劇団に各1点づつを入れるかのどっちかである。
そして審査員は、一人30点を持ち5点単位での投票権がある。つまり審査員は一般観客の15人分の権利を持つわけだ。観客の票数に比べて審査員の票数の割合がいのに驚く。
 表現はスポーツや科学と違って数字で評価は出来ないというのは正論だが、これは一つの遊びで、その評価を元にいろいろと考えようということであろうか。



 予選 Aブロック 

演目1  めぐりズム 

劇団名/劇団しろちゃん 
作・演出/鎌塚慎平

 日常の挨拶がシュプレヒコールのように発声され、様式的な集団ダンスのような動き、そして最後に終わりのない円周率が無限に続くように唱えられる。論理と理屈を、リズムとダンスで視覚化・聴覚化したような舞台であろうか?
 審査員の泊篤志氏が、名古屋の劇団『ままごと』の表現方式に似ていると指摘しているが、当事者の劇団『しろちゃん』に聞いてみたかった。
 いっとき、東京の劇団『チェルフィッチュ』の表現技法が独特で、いろんな劇団が似たような表現手法を使っているが、僕が観たそれらの形は『チェルフィッチュ』に似ているが、その内容には、それぞれ独特の思いがあったと思う。
 そういう意味では、形を真似るだけでなく、似せた方式に別のあるメッセージを入れ込むことは、模倣を通り越して別の表現になっていた。
 泊氏も、せっかくそこに気付いたなら、そこまで聞くか、泊氏の評価を話すべきだったと思うのだ。質疑時間があれば当然、聞きたかったのだが……



演目2  ヨヨヨ。テコロレプ 

劇団名/くしろ高齢者劇団
作・演出/佐藤伸邦

 老人たちが病院で交わす日常の描写。医師たちや、ちょうど来院していた女たちも含めたワンシーンだ。
だがテンポが遅くてまだるっこしい。考えてみるとそのテンポが現実の老人たちだとしたらリアルなのかもしれないが、演劇としてはマイナスだろう。現実そのままを映しても表現にはならない。
 この短編演劇祭は「遊び」の精神だというが、この舞台に優劣を付けるのは無理だし無意味だ。4つの舞台を同じ基準で優劣を付けるのは難しい。所詮は好みの問題だと思う。



演目3  セクシータイツバーPARADISE 

劇団名/パースンズ
作・演出/畠山由貴

ホステスたち全員が各色のカラー・タイツのクラブが舞台だ。タイツ民族の生き残り策であると同時に、民族再興の工作員かテロリストでもあるらしい。
マスターの亡き夫はゴールド・タイツの平和思想のリーダーだったと追慕する。タイツ女性の中に潜入捜査官がいたり、黄色・タイツはゴールドの妹だったり、物語は輻輳してタイツ姿の意外さと社会性のミスマッチが面白い。



演目4  ラッキー・アンハッピー 

劇団名/yhs
作・演出/南参

レースに勝った男が求婚権を持ち、アイドルと結婚して妊娠するが、血液検査で劣性遺伝子が判明、対応を巡って意志が相反するが、長い確執の後はハッピーエンドになるという一種のプロバガンダ劇みたいだ。
この優勝男は尻尾を持ち、それが奇形であると同時に個性だというところが、胎児に対する思いに重なる。
物語は単純で、深みはないが表現法が素晴らしい。スピードとスローモーションが絶え間なく交互に現れて、生理的な快感に浸る。だからこの話に無理なくスッと入り込めるのだった。
 ただ惜しむらくは、物語が後半に入ると俄然テンポが落ちて辛気臭くなることだ。前半の快調な流れが滞って理屈の応酬になってしまうのが心残りだった。



予選Aブロックの得点表

劇団名 タイトル 観客  審査員 合計
   yhs ラッキーアンハッピィ 155 40 195
  パーソンズ  セクシイタイツバー 78 10 88
くしろ高齢者劇団  ヨヨヨ。テコロレプ 39 35 74
  しろちゃん    めぐりズム 45 5 50




 予選 Bブロック 
 
演目1  優曇華の花が咲くときは 

劇団名/TUC+KYOKU
作/橋本一兵 演出/滝沢修

華麗な絵巻物。だがここから何かを訴えるものが分からない。橋本一兵氏と滝沢修氏は同一人物だと思うが、以前『極』で創っていた時は刺激的だったけども、最近こういう路線になったのは何故だろう。僕としては評価できないのだ。



演目2  死ぬまでにしておきたいこと 

劇団名/パセリス
作・演出/浅海タクヤ

TVの占い番組に群がる人たち、占いで未来の滅亡と、逆に自分の力を信じようというメセージなのかも知れないが、余り説得力はない。単なるコントみたいな感じ。



演目3  マグカップダイアリー 

劇団名/TBGZ
作/里美ユリオ 演出/八十嶋悠介
オフイスルーム、3人のOLの日常。朝・昼・夕方と彼女たちの仕事以外の交流シーンが、ワン・カット風に次々と描かれる。はしゃぎ女の新婚の夫が迎えに来る。
その二人に憧れるカスミ。はしゃぎ女の残したマグカップを嘗め回すカスミ。先に席を外したはしゃぎ女を迎えに来た夫に迫るカスミ。引き込まれる夫……
冷静に見つめる第三の女。様々なメタフアーが考えられる物語だが、異様性愛のイメージが強くてちよっと引くのだ。



演目4  ふたりの桃源郷 

劇団名/アトリエ
作・演出/小佐部明広

銀行強盗と警察との駆け引きが、偽刑事を交えてサスペンス調で力強く描かれ逆転するコメディでもある。勝つことが彼らの桃源郷なのだろうか。面白いのだがよく判らない。



予選 Bブロックの得点表

劇団名 タイトル 観客  審査員 合計
  TBGZ マグカップダイアリー 36 50 86
  パセリス 死ぬまでにしておきたいこと 64 10 74
アトリエ ふたりの桃源郷 32 25 57
TUC+KYOKU 優曇華の花が咲くときは 9 5 14

  

 決 勝 

演目1  ランディおじさん 

劇団名/劇団B級遊撃隊  ゲスト劇団  作・演出/佃典彦

 46歳で20年の刑務所暮らしの男があるとき、球速175キロの投球が出来るという夢の暗示を信じて、それを聞いたバッテングセンターの店長が、自分のチームで使おうとしてバッテングセンターで雑用に使いながらチャンスを待つ。
 そこへ、この超速球に怖じない若者が訪れて色めき立つが、この若者は自信が無い。3人の駆け引きが続くのだが、リアリテイのある巧妙なギャグが惹きつける。ダンボールで造った舞台装置が楽しく、これもギャグに使っている。だれか審査員が脱力系の装置だと言ったが正にその通りだ。



演目2  マグカップダイアリー 

劇団名/TBGZ   予選B組の勝者   作/里美ユリオ 演出/八十嶋悠介

 予選で紹介済み



演目3  にせんえん 

劇団名/イレブン☆ナイン  昨年度の優勝劇団  作・演出/納谷真大

劇団員たちの雑談の中に、主宰者が演劇コンテスト大会への不参加を伝える。それは入場券の値上げとチケット販売手数料の減額に対する疑問である。
その短いカットの同じシーンを何度も何度も繰り返す独特の表現が刺激的だ。
金銭社会・経済優先社会への警告ともとれるマンガ的な痛快短編。



演目4   ラッキー・アンハッピー

劇団名/yhs    予選Aの勝者   作・演出/南参

予選で紹介済み



決勝の得点表

劇団名 タイトル 観客  審査員 合計
  yhs ラッキィアンハッピィ 185 10 195
イレブンナイン にせんえん 94 40 134
B級遊撃隊 ランディおじさん 38 25 63
TBGZ マグカップダイアリー 42 15 57

決勝で際立ったのだが、優勝したyhsの観客票が2位のイレブンナインに対して、ぶっちぎりのダブルスコアなのに、審査員票が全く逆転していることだ。
予選でも、必ずしも観客の評価と審査員の評価が一致しない場合がある。