演 目
はだかの王様
観劇日時/13.7.19. 19:00〜20:40
劇団名/楽市楽座
上演形態/全国巡演野外公演
作・演出/長山現
出演・演奏/長山現・佐野キリコ・萌
劇場名/旭川市市民活動交流センター CoCoDe 前庭の野外特設劇場

無能の権力者を揶揄するお伽噺

 楽市楽座というのは野外で臨時に設営する特設の舞台で上演する、特色の強い演劇集団である。しかも壁も天井もない野ざらしの舞台だから観客は自由に出入りができて入場無料なのだ。
 ではなぜ興業が成り立つのかというと、すべて観客の投げ銭が頼りなのだ。珍しい形態だが、逆に観客は投げ銭も舞台参加の一つのパフォーマンスとして楽しんでいるのだ。劇団もそこは充分に承知で投げ銭が気持ちよくできるように様々な工夫を凝らしている。
 もう一つの特徴は、この劇団員の構成だ。座長とヒロインはご夫婦であり、もう一人の劇団員はその一人娘の中学生なのだ。僕が初めてこの劇団を観たときには彼女は小学低学年だった。今では立派に成長して、もう一人の女優としても評価の対象になるくらいになっている。
 屋根も壁もないけれど、公園や社寺の境内などに、今日は地域のコミユニティセンターの前庭に直径5メートルほどの手製の仮説プールを設置し、その中の水をモーターで回転させ、その水面にテーブルを浮かせてゆっくりと360度回して、その上で物語が展開する。
 一つには物語が世界を回るという感覚があるのかも知れないが、実質はグルッと360度を囲む観客のすべての視線に対応したいというサービス精神であろうか。
 己の実像を自覚できない、あるいは見ようとしない最高権力者・裸の王さま(=長山現)、それを取り巻きその力を利用しようとする詐欺師(=佐野キリコ)、そして真実を見極めたデザィナー(=萌)というアンデルセンの単純で象徴的な物語をエンターテインメントとして表現した意図は良いのだが、少々メッセージが生のままに出てしまったのは疑問だ。
 この野外劇場の特性をうまく生かして、いささかオーバーとも思える演出・演技でこの象徴的な物語を面白く分かり易く表現していた。