演 目
青森県のせむし男
観劇日時/13.7.13.〜19:05〜20:20
劇団名/風蝕異人街
作/寺山修司 構成・演出・照明・美術/こしばきこう
音響操作/小林竜也 椅子制作/jamani 
制作/実験演劇集団 風蝕異人街 宣伝美術/山本美里
劇場名/阿呆船

平凡な日常を、「グニャリ感」が象徴する

 赤い格子の檻に囲まれた暗く狭い空間に、裾模様の黒い紋付きを着て狐のお面を被った8人の男女が『かごめかごめ』を不気味に低く合唱しながら提灯下げて中腰で行進しながら出てくる。
 黒沢映画の『夢』の1シーンを、おどろおどろしく変化させたようなシーンだが、狭く暑い空間では、なお一層暑苦しい。
 物語は、この閉鎖された前世紀風の集落で起きた女性の母親としての悲劇だ。そこには寺山が終生背負っていた生きることへの負の感情とそこから絞り出すような生命への喜びが捻れて表出される。
 時には『月の砂漠』も歌われるが、これはハッピイの予感なんだろうか? おどろおどろしく歌いながら、これもやっぱり風蝕異人街が得意の昭和歌謡がうまくフイットしている。
 この母親も息子の思いも普遍的だ。それがグニャリとした表現で表出されると一瞬の拒否反応が起きる。だが、そのグニャリ感が大事だ。日常の平凡な生き方の中にグニャリ感はないだろうか? そしてそれが21世紀の世界の現状を象徴していると言ったら深読み過ぎるだろうか?
 この母と息子の描くその非日常的な感覚が今の日常の生活感情にある種のショックを突きつけるのではないであろうか。彼ら彼女たちの低くバラバラな日本民謡の合唱が怨訴のごとくに響いてくる。
 狭く暑い超ミニ劇場での1時間15分の舞台はアッという間に終わって暑さを感じる暇はなかった。
 出演。大正まつ=平澤朋美/女学生=山本美里/大正松吉=三木美智代/
少年・寺山修司=三木美智代/旅芸人座長=小山由美子/七草の女=石橋玲/
道化の赤い花=骨折/白い花=平野たかし/美少年=上村聡/
美少女=丹羽希恵/ヴィーナス=延原香沙音/
その他、噂の女たち=長谷川、石橋、小山、平澤の兼役。