演 目
日本語私辞典
観劇日時/13.6.28. 19:30〜20:40
劇団名/オイスターズ
公演形態/若手演出家コンクール2011最優秀賞受賞作 第14回公演
作・演出・舞台美術/平塚直隆 舞台監督/柴田頼克 照明/今津知也 音楽/青井美都・河村梓 
出演/高瀬英竹・空沢しんか・吉田愛・河村梓・田内康介・二瓶翔輔・山田マキオ・平塚直隆・川上珠来
劇場名/コンカリーニョ

コミユニケーションの基本

 50音の一つ一つの発音を失っていくとコミュケーションはどうなるか? 人々の自己表現意志はどうなるのか? という実験のような舞台であろうか?
 井上ひさしに同様な戯曲があった。『国語事件殺人辞典』……いつかどこかでアマチュアのこの舞台を観たような微かな記憶はあるんだけれども……おそらく言葉による不完全なコミュニケーションの事件を描いた物語だったような気がするが、演出・演技が未熟でちゃんと観られなかったような気がする。
          ☆
今日の舞台は、舞台一面に5b×横15bくらいの大きな障子のような物が建てられて、それが75の枠に仕切られた一つ一つの中に、一人の男が墨汁で平仮名の五十音図を書いて行く。まるで世界に言語・言葉の存在を知らしめるが如くに。
黒装束の男女9人が、その超大型の障子の前で、様々な役柄を交互に演じながらいろんなシュチュエーションの物語を演じる。
 それは家族であったり高校の教室であったり、公共道路の通行人だったり、しかもリアルな演技じゃなく型にはまったような抽象的な演技である。
 そして時が進むにつれて50音の一つずつが消えてゆくとその音の抜けた言葉で不便な会話が交わされる。音が消える度に背景の障子の、その音が後ろから切り取られて最後には枠だけが暗闇の中に残る。
 音の数の減った会話は、だんだん意味が通じにくくなっていき、最後には成立しなくなるだろう……
 演劇というよりは、人間の存在に言葉がどういう価値をもつのかという意味を、無機質に実験しているような感じの舞台である。