演 目

観劇日時/13.6.22.〜18:00〜19:50
劇団名/ハイバイ
上演形態/10周年記念全国巡演
作・演出/岩井秀人 舞台監督/谷澤拓巳 舞台美術/秋山光洋
照明/松本大介 照明操作/和田東史子 
音響/高橋真衣・中村嘉宏 ピアノ演奏/森隆文
衣装/小松陽佳留 衣装助手/白井翔子
大道具/C−COM・美術工房拓人・オサフネ製作所
小道具/細淵裕子 宣伝・記録写真/曳野若菜
宣伝美術/土谷朋子 制作/三好佐智子・坂田厚子・藤木やよい・西村和晃
その他スタッフ/大勢
劇場名/コンカリーニョ

暴かれた家族の裏面

 完全に認知症で家族の名前も顔も分からなくなった一家の長老・96歳の井上菊枝(=永井若葉)が亡くなった。集まった一同はその長男(猪股俊明)、その妻(=岩井秀人)、その長男・太郎(=平原テツ)、長女・よしこ(=佐久間麻由)、次男・次郎(=富川一人)、次女・かなこ(=上田遙)、よしこの夫・和夫(=奥田洋平)それに次郎の親友・前田(=高橋周平)等である。
 牧師(=小熊ヒデジ)は尤もらしい過大な因縁話を披露する。厳粛であるべき話の途中で次郎は前田に大声で牧師の嘘っぽい話を糾弾する。でもそれは後で回想している場面をストップモーションで挿入したシーンだ。インパクトが強いから最後まで印象に残る。
 4人の兄妹たちは決して幸せな家族ではなかった。廃人になったような祖母の病床に久しぶりに集まった家族も兄妹の確執が絶えない。特によしこと次郎が何とか取り持とうするのだが太郎と父親は素直じゃない。太郎はまさしく父親のDNAを受け継いでいるし、その父親も体力が弱ったといえども精神は全く変わらない、相変わらずあの手この手で自分を通そうとする。ついには暴力で次郎と衝突しそうになる。
話は、野辺の送りまで展開して暗転すると、客席を左右に分けて中央に設えられていた舞台が、180度回転して上下(カミシモ、つまり観客からみて左右)が逆転し同じシーンがもう一度繰り返して演じられる。つまり左右に別れて観ていた二組の観客が今度は同じ展開を裏側からもう一度観ることになるのだ。
ただし最初には演じられなかった微妙な別のやりとりが演じられてその場の雰囲気が別の局面から表現される。この手法が面白く納得がいく。
 以前にアトリエが演じた方法であり、その他にもあったかも知れない。ラストはトップシーンに戻って葬儀を終えて火葬場で全員が賛美歌を合唱しながら棺を竈に入れようとするのだが気が合わないから中々うまく入れられない、賛美歌もバラバラだ。
 これは一家族のゴタゴタだけど、肉親でさえこうなんだから、あらゆる集団ではもっと大変な混乱が起きているんだろうなって思わせる深刻な物語であった。
 その他葬儀社の社員で、青野龍平・用松亮が出演。