演 目
螺鈿の宝石箱
観劇日時/13.5.29. 20:00〜21:13
劇団名/シアター・ラグ・203
上演形態/水曜劇場Vol.22
作・演出/村松幹男
音楽/今井大蛇丸 音響オペ/田中玲枝 照明オペ/平井伸之
宣伝美術/久保田さゆり
劇場名/ラグリグラ劇場

孤独な女の一瞬に錯綜する心情

 この話は女Bの心の中のことではなく、実は逆で、女Aの心情の裏側がBだったのだと考えられる。だからこの女がAと命名されたのだろう。
 いずれにしても抽象的で観念的な、ややこしい話なのだが、Aの一瞬の心境の裏側に視る哀切な心情の表現であり、写真にAは写らず、時計は止まったままなのだが、これは劇ではなく微細に亘って丁寧に創られた一種の立体的な抒情詩だと思われる。だから詩が多用されているのかもしれない。
 初日・中日そして今日が千秋楽の観劇なのだが、今日はAとBとが実は逆だと言う発見の他には新しい感想は無かった。
 ちょうど今夜、5月29日の北海道新聞・夕刊の「魚眼図」に「(要約)心に傷を受けた時、多くの場合、等身大に、客観的に、冷静に受け止められない。(略)一度とりあえず意識の上で箱に収納してしまうカウンセリングの方法(略)がある。年月を経て、その箱を取り出してみると、そこには自分が壊れてしまいかねなかった、かつての大きな出来事がいまや小さく思え、全てが自分のせいだけではなく、むしろ、なぜそこまで当時は自分自身を否定してしまったのか不思議に思われることも多い。」(山崎真紀子・札幌大教授)と、小説『色彩を持たない多アつくると、彼の巡礼の年』の解説の中の一部分に書かれていた。
 これは『螺鈿の宝石箱』の解説としてもピッタリの気がする。まさに彼女の壊れてしまいそうな思いを螺鈿の宝石箱に仕舞い込むのだろう。