演 目
この道はいつか来た道
観劇日時/13.5.18. 19:00〜19:55
劇団名/釧路・北芸
作/別役実 演出/加藤直樹 舞台/上田知 
照明/岩尾修一 音響/小川さおり 
劇場名/シアターZOO

文明の行く末と人間の生と死と

 別役実の独特の世界、薄暗い街灯の点いた木造の古びた電柱、プラスチックの大きなポリバケツがその電柱の根本に置いてある……
 古びた電柱は科学文明の生き残りを示唆し、ポリバケツもやはり科学文明の末路を象徴的に表していると思うのは穿ちすぎか? でも僕にはそう見えてしまう。
 この作品は何度も観ているのだが、今までは二人の男女(=加藤直樹・森田啓子)の生と死との問題と捉えていた。それは必ずしも間違ってはいないのだが、今日は開演前に古電柱と汚いポリバケツを眺めていて、ひょっとしてこの舞台は、死に向かう男女の覚悟の芝居であると同時に、一緒に滅びゆく科学文明の終末を暗示したのかなとさえ思えたのだ。優れた表現作品は様々な解釈に耐え得るのだが、まさに、この舞台、特にこの戯曲はその感が強かったのだった。
 軽妙な演技はとても魅力的でアッと言う間に終わったように思ったのだが、後に残ったのは人間の生と死とを深く考えさせる深い感情であった。
なお、初見の感想は『続・観劇片々』第5号所載