演 目
つちのこ
観劇日時/13.4.10. 13:30〜16:00(途中15分休憩)
劇団名/劇団 青年座
上演形態/旭川市民劇場 4月例会
作/太田善也 演出/黒岩亮

良心と欲心との葛藤の物語

 何もない田舎だと言われて、自分たちもそういう風に思い込んでるド田舎に住む幼なじみの3人の男たち……。そのころ、この純朴な田園風景の至るところに廃棄物が捨てられているのが目立つようになった。昭和50年代の経済高度成長の時代にあった日本中の景色の一つでもある。この成長と消費の経緯は、事の大小はあっても、やっぱり現代にも存在して正に歴史は繰り返すのだ。
 3人の若者たちは、そういう悪環境を守るために夜回りをやっていた時に偶然、捨てられた箪笥の引き出しに黄金の延べ棒が10本も隠されていることに気づく。
 民宿の長男で市役所勤務の生真面目な男・柿沢真一(=石母田史郎)、理容院を経営する山気横溢の男・若月猛(=高松潤)。そして僧侶の息子で自分も副住職で真面目で気の小さい男・日吉信彦(=山崎秀樹)、の3人である。
一瞬の邪悪な時間と気分が合って3人は、この真偽の分からない出所の不明な金の延べ棒をいったん隠して機会をみて換金して山分けすることを、あやふやに同意する。3人それぞれの思惑が、周囲の目線に会って危機一髪になるスリルが、つぎつぎと展開する。
特に山気横溢の男・若月が、さらに欲気の強い妻・弥生(=佐野美幸)に秘密を漏らしたことで危なく露見しそうになり、それが続いてゆく過程が面白い。
 そこへ民宿の長男で真面目な男の所へ、彼の学生時代の女友達・渡辺清香(=小林さやか)が傷心の旅で訪れる。この女性とその男の現在の恋人・紗江子(=森脇由紀)との三角関係の軋轢、気の小さい男である僧侶の息子と生臭い父親の僧(=平尾仁)との葛藤などを展開しながら終幕へと向かう。
 この中で疑問なのは、突然に傷心で来た学生時代の女・清香が、なぜ彼ら3人の秘密を知っていたのかという説明がないこと、そもそもこの金の延べ棒がなぜ廃棄物の中にあったのかということ、そしてそれは本物なのかということは、謎のままの方が面白いのに、ラストで爬虫類研究学者を装って、この民宿に寄宿している男・渋谷修(=石井淳)は、実は悪人の手先でこの延べ棒を強奪するというのはリアル過ぎて興を殺ぐ。
これらの謎は永遠に不明で、3人の妄想に彼ら自身が勝手に踊らされていたという方が、3人の滑稽さが大きく立ち上がる。昔の女友達が彼の隠し事を知っていたとか、隠した犯人が名乗り出るのは白ける。
 秘密の出来事の中で起きた欲望の事件に、彼ら自身が逆にあたふたさせられていた方が、想像力も大きく膨らんで印象が強いと思うのに残念だった。
 その他の出演者。柿沢の祖父(=名取幸政) 母(=増子倭文江)、弟・龍二(=豊田茂)、紗江子の母(=松熊つる松)。