演 目
ピープー
観劇日時/13.3.30. 19:00〜20:10
公演形態/北海道舞台塾シアターラボ深川プレ公演
脚本/OZ・野原綾華・中嶋彩華
作・演出/きくち ドラマドクター/納谷真大
舞台監督/上田知 
舞台スタッフ/竹内啓祥・盛本和志・宗方恵一
音楽/助安正樹 照明/宮田哲自
出演/菊地清大・佐藤自真・野原綾華・中嶋彩華・吉田雄飛・小川千里・上田奈々佳
劇場名/深川市文化交流ホール「み・らい」

他人の私生活を覗き見る

 「ピープー」という題名は、people (ピープル) とpeep (ピープ) とを合わせた造語だという。つまり覗き見する人たちという意味だろう。人は他人の私生活を覗き見したがるものだという大前提にたったタイトルで洒落たネーミングだ。
 結婚寸前の一人の女を巡る家族の話、ホテルに勤める若い女の仕事と友人の話、そして家族を置いてきぼりにして東京で若い女性のアイドルグループに入れあげる中年男の話の3つをオムニバス風に描きながら、それらを繋いで一つの物語に収斂させていく。
 特徴的な描き方として、一つには、あるシーンから次のシーンへとそのまま連続させる、例えば前のシーンでは携帯電話で相手と話しながら立ち上がって次の場所へ行く途中で相手が変わって話の内容もいつの間にか変わって行く、とか、あるシーンで対話をしている二人がいつの間にか違う人物になって違う話題を交わしている、とかの描写が頻発する。
 次に面白いのは、前記の特徴と被るかもしれないけど、いつの間にか過去や未来の話が現在形で進展したり、空間と同時に時間をも超越して描かれることだ。
 さらにもう一つの特徴は、一人の登場人物が複数の俳優で演じられることだ。つまり時間と空間と人物さえ自由に交差して意表を衝くシュールな表現であることだ。
 これらの手法は、人間の心理や行動は自由に飛び跳ねるし様々な人たちに共通する部分が多いなどという意識の具体的な表現ともいえるわけで、ユニークで面白い表現だと思う。
 だが笑いを取ろうとしてオーバーなアクションが多出するのは観客の低い興味に迎合することで、一種の悪い宴会芸のようなもの。顔見知りの人が日常と違った場所で日常では見せないとんでもない行動をやらかすことで笑いを取ろうとする生理的・瞬間的な低次元の手法で、笑いの本質が表現されていないと言わざるを得ないであろう。
 そして人間同士のコミュニケーションの在り方と、表に出ない愛情の暖かさなどというテーマの描写力が弱いから訴求力が弱いのが最大の欠陥であろうか。
 この上演は2年間の作品創りの第一歩であるようだから、来年の完成した舞台に期待しよう。