映 画
たそがれ清兵衛
観劇日時/13.3.24. 18:10〜20:20
監督/山田洋次 脚本/山田洋次・朝間義隆
音楽/冨田勲 主題歌/井上陽水
プロデューサー/中川滋弘・深澤宏・山本一郎
製作/大谷信義・他5人
美術/出川三男 撮影/長沼六男 題字/中川幸夫 他
鑑賞場所/深川市アートホール東洲館

不条理で不遇だけど清楚な理想のカップル

 力のある剣豪だが、下級武士に甘んじている井口清兵衛(=真田宏之)。妻は労咳で早世し、二人の幼い女の子と、「仏様に近づいた人」である母親(=草村礼子)を養いながら、安月給に苦しんでいる。
 この辺りは昨今の現状とあまり変わらない。絶対服従の上下関係の中で、理不尽な日々の生活である。
彼には、幼なじみで親友・飯沼倫之丞(=吹越満)の妹で上級の武士・甲田豊太郎(=大杉漣)に嫁入りした朋江(=宮沢りえ)がいた。
 朋江が嫁入ってみて分かったのだが相手は酒乱だった。兄は自分の不明の責任を負って離婚させたが、甲田はメンツを潰されたことを根に持って朋江の実家に酔って暴れ込み、居合わせた清兵衛と後日決闘をすることになる。
 甲田は藩の武術者だ。決闘の日、隠れた素質を遺憾なく発揮した清兵衛は甲田を叩きのめす。この辺は爽快だが、清兵衛がこんなに強いのは、ちょっと意外な感じがする。
 それから清兵衛は、周囲から一目置かれるが、清兵衛はいずれ幕府が倒れて武士の時代が終わったら百姓になりたいと思っている。
 藩主の早世によって藩は分裂する。直属の上司の命により清兵衛は反主流の剣豪・余吾善右衛門(=田中泯)の暗殺を命じられる。その剣豪は狂気になっており、内々で処分しなければならないから一人の刺客でやらなければならない。
 狂気の剣豪・余吾は、相手の清兵衛の自分と同じ境遇であることを理解する。権威の縦社会にあって何時も負担を被るのは下級武士だ。清兵衛は共鳴する。だが剣豪・余吾は自他ともに認める自分を、名も知れない下級武士しかも短剣で来るのは自尊心が許さない。壮絶な決闘の末、清兵衛は傷だらけになって勝つ。家で待っていたのは朋江だった。
 ついに時代は変わったが、清兵衛は維新のとき、官軍の凶弾に若い命を絶たれる。後に残った二人の子供と一緒に朋江は母親と夫の墓を守る。さらに後年、年とった子供の老後を演じたのは何と岸恵子だった……
控え目だが決然と決める時は決める男と、陰で尽くす女の理想の清楚なカップルのあり得るべき物語。