演 目
鈴木14世
観劇日時/13.3.17. 13:40〜14:05
劇団名/ままごと
上演形態/シアターラボ・プレ=公演「ままごと」版
作/イトウワカナ 演出/柴幸男
劇場名/札幌教育文化会館小ホール

違った表現の功罪

 イトウワカナの同じ戯曲なのだが、ドラマドクターが別に演出した。ドクターという指導者的立場ではなく、自分だったらどう演出するかという視点で舞台化した作品だが、芸術作品は指導するというよりも自分だったらどう創るかという方が説得力があると思われる。
 戯曲も2・3点書き換えられている。一番分かり易かったのは、幕開けで妻が大切にしているハムスターを確認するのにイトウ版では単に番号を数えるだけだったのに柴版では第何世、第何世と数えていたので、何か生き物を数えていることが印象つけられたこと、夫がハムスター・アレルギーだということを証明するためにイトウ版では医者の診断書を見せたのに、柴版では自分が飲んでる大量の薬を出して見せたために視覚的に強い印象を与えたこと。
 ただしこれはアフタートークで柴氏が「離婚届けを一度目は破られ2度もだし、最後に診断書を出すのは紙が3回で印象が薄い」といったが、僕は同じような繰り返しが逆に印象が強いと思う。これは一長一短であろう。
 書き換えたり前後を入れ替えたりしたのは全体的に締まって分かり易くなったと思うが唯一疑問が残るのが、妻の蟹アレルギーの問答だ。妻は蟹が大好物なのだが、逆に猛烈なアレルギーがある。新婚時、正月に夫の実家へ行ったとき、両親が蟹を勧めたら断りきれずに好きだから大食いしたら喜んでもらえたけれども、暫く死ぬ目にあったというエピソードがカットされていた。その理由が分からない。
 様々な演出があり、それのどちらが良いとは即断できないだろう。もちろんダメなものはダメだが、台詞の中にもあったように「両方あってどっちも良い」という金子みすずの詩語に尽きるであろう。金子みすずはいまさらながら良い。