演 目
迷子、そのまま旅に出る
観劇日時/13.3.16. 13:00〜14:20
劇団名/演劇公社ライトマン
作・演出/重堂元樹 照明/樋口優里 音響/畑山慶太 宣伝美術/小川順子
制作/演劇公社ライトマン WEB管理/菅野真由美
劇場名/シアターZOO

大人になる女

 25歳の女・江上礼子、通称エレコ(=びす子)は,リンゴ農家の次女だったが、たぶん事故で母を亡くし同時に父・礼二(=棚田満)は片膝複雑骨折の重傷を追い、兄の太一(=重堂元樹)と3人だけが残される。それからエレコの大人になる人生が始まる。
 たぶんそういう話だと思われる。というのは全体の表現方法がマンガチックで象徴的というか、さらに時代が過去と現在とが交錯し、自分勝手で観ている客の方で適当に判断してよっていうような仕方だから、客も自分本位で物語を考えざるを得ない。だが逆にこれが観客の想像力を喚起させて面白いのだ。
 特に開幕シーンで、ある企業の面接採用試験をエレコが受験する場面が面白い。面接官たちはいずれも地獄の鬼たちである。しかもその中で際だつのはゾンビ(=フレンチ)であり、彼はその後、様々な場面にゾンビのキャラクターで登場してエレコを背後霊のように後方支援する。
 やがてエレコは人生の分岐点で突然に失踪した父親を捜す旅に出る。偶然行き着いたある家族は、昔の江上家と同じ家族構成だった。父親と3姉妹(=木幡あゆみ・遺田奈央・竹本恵理)。
 だが父親と長女ののぞみは夫婦でありしかもエレコの異母妹になる子を妊娠していたのだ。すべてを受け入れるエレコ。自分が見たのは幻なのかも知れない、人生はすべて幻……
 映画のように激しく次々と移り変わるいシーンの転換が、話の筋を追うだけで気がつくと場面が変わっていて、さっき演じていた俳優が次には全くキャラの違う役を演じている。人生にこういうことってあるよなァ、なんてつい納得してしまう目まぐるしい展開。
 最後に立ち会った、父親の新しい家族が、かつての自分の家族と相似形だったのと、そこで新しい父親になっている人が新しい家族を作っているのが、彼女の今後を支えるのだろうか。 
 だがエレコ本人も、新しい父親の新しい家族を全面的に祝福しているわけではない。彼女の妄想である。だがエレコはそこから出発する。
 エレコ役のびす子以外は、様々な役で何度も出没するが、他の出演者は、田村嘉規・中島麻載・長谷川碧でその総計10人。