演 目
prayer/s
観劇日時/13.3.3 14:00〜15:30
劇団名/RAWWORKS
作・演出/永山智行 演出助手/山下キスコ 照明/工藤真一 
デザイン/阿比留由貴 制作/橋本理沙・佐藤紫穂
ツアーコーディネータ/大堀久美子・北村功治
出演/酒瀬川真世・上野敦子・イワモトエリ・川内清通
北海道出演/福井岳郎
劇場名/シアターZOO

女の一生

 低く垂れ下がった7・8本の、薄暗い小さな電灯だけが照らす無明の闇を象徴するような何もない舞台……
 片隅にだけ廃棄物のようなガラクタが少しだけ捨てられたように積んである。その中に振り子のない時計と文字盤のない掛け時計が無意味に針だけを回している。時間を超越したというか時間の観念を無視したというか…… いずれにしても、良く言えば哲学的と言うか、観念的で頭でっかちな舞台装置ではある。
 二人の女性が並んで様々な会話を交わすのだが、普通の会話とは違って、テンポが意識的にずれたり噛み合わなかったりする。この会話は他の二人の男女の人物が演じる踊りのような展開に従って要所々々で語られるのだが、それが何を意味しているのか定かではない。
 パンフレットによると芥川龍之介『大震雑記』『ピアノ』『人と死と』、太田省吾『更地』『流れる』、岸田國士『ブランコ』、ペケット『ゴドーを待ちながら』、山田風太郎『戦中派不戦日記』ほか、と記載があり、これを見ると何かがありそうだが、観劇中にはその印象は薄い。
 男女の二人は、最初抱擁し蠕動し、これは愛の交換を象徴していると感じる。やがて女性は寝転んで呻吟し結果、新しい命の誕生を感じさせる。
そして、それから1時間半に亘って、この男女の様々な展開があるのだが、その具体的な印象は薄い。気が付くと半裸身の女性は舞台前面の台上に立ち上がって背を向け、全身を波打たせて歓喜の様相を見せる。
 と、僕にはそのように見えて感じさせた。せっかくたくさんの文章の引用がインパクトを与えなかったのは何故だろうという強い疑問が残ったのだが、不思議で余り見かけない表現と、たくさんの文章の断片とが噛み合わない焦慮に、できればもう一度改めて観劇したいとさえ思う特別な魅力があって、それを一回では受け取れなかった悔いが残ったのだ。すべてのシーンが prayer の断面を表しているというのだろうか?