演 目
ライナス
観劇日時/12.2.9. 18:00〜20:10
劇団名/イナダ組
作・演出/イナダ 照明/高橋正和 音響/奥山奈々 
舞台美術/福田舞台 舞台製作/ドットライン
舞台監督/高田豊 音楽制作協力/ジョーダウンスタジオ
宣伝美術/山田マサル 衣装/村山里美・熊木リサ
小道具/中村ひさえ 
制作/小柳由美子・岡田まゆみ・田中絵梨・稲村みゆき・新浜円
劇場名/コンカリーニョ

閉じこもった少年の心の軌跡

 幼児に父母(=武田晋・山村素絵)が離婚した直後に生活に疲れた母が病死し、姉(=柴田友佳)と二人で叔母(=庄本緑子)に育てられて、閉じこもったまま喋らなくなった少年(=大島宏太)、10年後に別れた父親に一緒に暮らそうと呼び掛けられて、今は全く自立しつつある姉と一緒に尋ねた父親は、オカマであった……
 という、異常でもあり得る環境の少年が、心の軌跡を辿った物語である。おそらくここに出てくる人々に悪い人は居ない。皆んないわゆる常識人ではないけれど、一種のマイノリティーの人たちである。
 そういうマイノリティーの人たちの哀しい人生に巻き込まれて卑小化した心情の少年の悲劇であろうか? だがこの少年も20年後(=小林エレキ)には、すっかり普通の日常を送っているかと思うと、彼の娘(=吉田諒希)は父親にも明かせない児を身籠っている。彼女もやはり普通の常識的な存在ではなかったのだ。さらに妻(=松岡春奈)も夫の気持ちを冷たくあしらい娘を擁護する。
 父親はやっとあれから20年以上も経って普通の家族になろうとしているのに今度はわが娘に曲がり角を示唆されたのだ。問題は何も解決されず、先送りされるだけだ。
 父親は、一緒に住んで一緒にスナックを経営する相愛だと信じていた五郎(=谷口健太郎)が、元の家庭に戻ろうとしていることに衝撃を受けているのだ。
 時間と空間との輻輳する物語を達者な演技陣を駆使して描き出した。特に何時もの演技と一線を画した谷口健太郎の表出技術は素晴らしい。同じく城谷歩、氏家啓、高橋隆太などなど、おそらくイナダ演出の結果だろうと思われる新生面を開いた。
 その他の出演者。
城谷歩・氏家啓・佐々木くるみ・小倉佑介・高橋隆太・浅葱康平