演 目
碧空の狂詩曲
観劇日時/12.12.15. 18:00〜20:00
脚本・演出/斎藤歩 殺陣指導/TeamAZURA
舞台監督/寅川英司+鴉屋 演出助手/嶋田健太
美術/青木拓也 照明/斎藤真一郎
音響/ヨシモトシンヤ 音楽制作/Takeshi 
宣伝写真/石倉和夫 衣装プロデユース/牧野iwao純子 
企画/小椋正樹・一期一会 プロデユーサー/藤田大邦
劇場名/東京・渋谷区文化総合センター さくらホール

堅さと軟らかさの微妙な配分、時代劇を装った現代劇

 織田信長(=金山一彦)の妹・お市の方(=酒井法子)の生涯が史実を元に様々な虚構を織り交ぜて描かれるのだが、基本はタイトルにある通りお市が敬愛する兄の信長と一緒に観た、果てしない彼方に見る碧空の、さらなる彼方の希望を夢見る生涯だったのではないのか。戦国時代を凛として生き抜いた女性の一代記である。
 後半生の生き方を共にした柴田勝家(=今井雅之)に、「私は貴方の言う通りに生きます」という潔癖な断言……それらは全て一人の女の生き方であると同時に人間の生き方の理想像をも示す。
 戦国時代の大名たちがこの国のあり方を巡って理想を語り合うのは、現代の現実の混沌とした政治状況が学ぶべきものであり、身につまされる例え話しでもあるのだ。
 開幕、稽古風景のような現実っぽい状況を見せていて、それはまるで事実の描写なのか、芝居の導入なのか判然としない内に信長とお市の世界にいつの間にか導かれる。その間合いの良さ、つい引き込まれるテクニックが面白い。
 舞台は、空中に吊り下げられたバトンに、綱や切り裂かれた帆布などが雑然と引っ掛けられていて、階段状の真っ黒な台がアトランダムに配置され、それらが荒廃した戦乱の跡地を象徴して、しばらくは稽古の現実と始まった芝居とが混沌として、いつの間にか、お市の世界に引き込まれる。
「〜ジャン」とか「エッチ」とかその種の身近な現代語が飛び交いアドリブを装ったギャグも飛び出しエンターテインメント満載で、能装束のような女性が二人、上手・下手に分かれて必要なシーンでバイオリンとフルートを演奏するのもいかにも斎藤歩さんらしい洒落た演出である。この脚本と演出の手練は素晴らしい。堅さと軟らかさの渾然一体の手腕に引き込まれるのだ。
 話題の中心である肝心の酒井法子は、初日のせいか少し固くなってギャグもぴったりしない感じが痛々しい。でも清純で懸命とも見える、その姿勢が彼女本来の魅力なのだろうか……
その他の出演者。羽柴秀吉(=兼崎健太郎)。浅井長政(=鈴木秀人) 他19名