演 目
シアタースポーツ
観劇日時/12.11.25. 14:00〜15:30
劇団名/即興組合
公演回数/第15回本公演
MC/松本直人 タイムキーパー/田村正和
即興ミユージシャン/川西敦子 
即興音響/望月音次郎 
即興照明/高橋由衣
制作/佐藤紫穂・中村友紀
ジャッジ/テクニック=即興組合から1名
ジャッジ/エンターテイメント=齊藤雅彰 
ジャッジ/ストーリィ=松山徹
出演/即興組合=岡田みちよ・ニコラス・山田ともる・山崎孝宏
    YHS=越智良知・菅原有二・曽我夕子・戸嶋智美・最上朋香
   フリーフライッ=伽羅・ひめ・まめっち
劇場名/琴似 パトス

観客参加で劇創りを遊ぶ

 落語に「三題噺」というのがある。観客からお題を3つもらい、その題を含んだ物語を即興で1編に仕上げるのだ。
 その中には『芝浜』のように夫婦愛の傑作として現在でも人情話としては第一番の人気を保っている作品がある。その時に贔屓の観客から出して頂いたお題は @ 人物=「酔っ払い」 A 品物=「財布」B 場所=「芝浜」である。
 今日の「シアタースポーツ」という舞台は、それに近いかもしれない。3人一組の3チームが、あらかじめ観客から書いて頂いたタイトルや一言の台詞、そして上演直前に客席からだしてもらったタイトルを、ある一定の制限、たとえば「役者同士が身体を触れ合ったときだけ台詞が言える」とか「ミユージカル」で演じるとか「危険な場面ではスタントマンに代わってもらう」とか「ベルの合図で架空の言葉になる」とかほとんどナンセンスな制約の元に即興劇を演じて3人の審判員の5段階の判定によって優劣を決めるのだ。
 つまりこの舞台は、即時的な対応性と職人的な技術の巧拙を競う訳で、ドラマが生まれる可能性は少ない。実態は、ほとんどお遊びだ。
 今日の舞台も合計15作品が上演されたのだが、いかにも現在の若者の喜びそうなナンセンスなお笑いが多く、満場爆笑・哄笑の1時間半ではあった。だがそれはドラマの本質がもつ共感ではない。表面的な滑稽さに対する刹那的な笑いであろう。
 だからここでは本当のドラマの卵は生まれなかったのだ。だがただ一つだけドラマが産まれる可能性のある作品があった。
 それは『髭』という、観客が声を上げたタイトルで即興に作った舞台だ。
 権威の象徴としての父親の髭の攻撃で自分を失いそうになった娘が、いつの間にか自分にも髭が生えて、父親を越えて力強く生きていくというストーリィを即興で演じた。
 タイトルに対応する即戦力や即興的な演技力は甲乙付けがたい。問題は物語の力だと思う。そういう意味ではこの『髭』が一番に印象に残った作品であった。