演 目 THE Lady・Blues 〜彼女に何が起こったか?〜 観劇日時12.11.22. 20:00〜21:50 劇団名/怪獣無法地帯 上演回数/第18回 作・演出/渡邉ヨシヒロ 舞台監督/棚田満 照明/樋口優里 音響操作/渡邉豊大 舞台美術/濱道俊介 宣伝美術/渡邉ヨシヒロ・柳瀬泰二 制作/要害里奈・伊藤しょうこ・長谷川碧 映像/ムジナ 劇場名/BLOCH |
変身して視野が変わることで世界が変わるのか OLの蜜子(=ハナブサコウ)は、プライベートでは自堕落でほとんどオヤジ状態である。恋人の誠司(=梅津学)が三日にあげずに訪ねて来るのに相変わらずオヤジ状態である。 愛する誠司がいくら声を大にして訴えても変わらない。ある日、共寝して翌朝に目覚めるとなぜか蜜子は中年のオヤジ・ミツコ(=棚田満)になっていた。ハハハ、これってカフカの「変身」じゃない? そこから大騒動が始まる。誠司だって清廉潔白の身じゃない、むしろ浮気症で様々な女性の影がチラホラする。 蜜子の妹・葉子(=原田充子)だって自堕落女の一人だが、ただ者ではない。自分の怪しい女性的魅力を武器に金を持っていそうなスケベオヤジを手玉にとって好きなように生きている。 中年の小汚いオヤジに変身したミツコはその不条理に困惑し悩んだ末、ついに絶望して死さえ覚悟する。 そこへダメオヤジだが失踪した父親を探す娘・香里(=大沼理子)が、このミツコが自分の居なくなったその父親にそっくりなのを見て調査を始める。 男になった蜜子と居なくなった父親を捜す娘とが錯綜して現実味の薄い、だが壮絶なバトルが繰り広げられる。 理不尽な現実をどうやって受け入れるのか、とか理不尽な結果は社会の仕組みに問題があるとか、些末で結論の出ない問題提起が頻発するけど、それ以上に全体を通じるエネルギッシュでギャグ満載な表現に客席は爆笑の連続だ。 結局、探していた父親(=棚田満)と亡くなった母親(=ハナブサコウ)とが入れ替わっていたというラストになるわけだが、このシーンは要らなかったかなっていうのが僕の感想だ。無理に合わしたような帳尻だし、中年オヤジに変身したオヤジ女性が、そのまま生き辛い人生を何とか笑って生きていく方が現実的じゃないのか……こんなつらい人生を笑って生きていく人間の方が現実的じゃないんだろうか? 一種のハッピーエンドだが、エンターテインメントとしてはありかなって思うけど、合理的な解決をしないで、曖昧なままの幕切れの方が余韻があったような気がする。 エンターテインメントとして久しぶりに堪能したのだが、ちょっと長すぎた。ラストはほとんどハッピーエンドが予想されるのだから、もっと整理した方がスマートかなとは思うけど、こういう舞台は泥臭く引っ張る方が良いのかもしれない。ともかく久しぶりに大笑いした不条理の大喜劇であった。 その他に、蜜子の上司で狂気の中年男、葉子の術中に嵌る笹中役に長流3平、そして様々な役で、柳瀬泰二・フレンチ・柏木ヘレンなどが大活躍する。 |