演 目
第62回全道高等学校演劇発表大会
観劇日時/12.11.16. 
主催/北海道高等学校文化連盟・北海道教育委員会・全国高等学校演劇協議会
劇場名/札幌教育文化会館 小ホール

 全道各地での参加100校の地区予選を勝ち抜いた17校が、3日間の日程で決勝大会を開催、上演されたが、時間の都合で、その中の初日の4高校を観劇した。


演目1  やっぱりパパイヤ 

上演時間/11:20〜12.20
上演高校名/十勝支部・音更高校
作/阿部順 潤色/音更高校演劇部

パパは嫌

 父親と年頃の娘の物語。その微妙な関係を巧く表現する。かなり規模の大きな舞台装置で凝った物語を展開するが軽妙ではあるが深みが足りない。
 パパイヤとは果実の名前じゃなく「パパは嫌」ということだろうが、父親を敬遠する感情を甘酸っぱい果実に転換した心情を表して、面白いタイトルであるし、そういう味の物語であろう。



演目2  雨上がり 

上演時間/12:55〜13:50
上演高校名/道南支部・函館大妻高校
脚本/函館大妻高校 演劇部

美しい想い出のシーン

 学校内の苛めの問題を劇にした典型的で直接的な物語なのだが、シーンシーンの背景に出る幼い頃の思い出、幼馴染の二人が、あこがれの虹の町を訪ねる描写が夕焼けや薄暮の中にシルエットで表現されるのが意外と美しい。それが今の現実に対して消極的な慰め以上でないことがじれったい。
 女子高校なのでスタッフを含めて全員が女子だ。別に女性特有という感じはしなかったのだが……



演目3  すべり台をおりたら 

上演時間/14:28〜15:26
上演高校名/石狩支部・札幌清田高校
作/顧問・加藤裕明 部員の西田真由子・芦野滋恵・齊藤由惟 他、清田高校演劇部

姉弟愛の美しく可愛らしく元気な風景

現実の高校生たち男女4人が、職場体験で幼稚園を訪れるが、その一人である春花の弟「りく」は異母弟でその幼稚園の園児。春花に懐いていたが、最近、反抗的になっている。なおこの4人の高校生たちは全員実名が役名である。
幼稚園児6人の演技が素晴らしい。全員女子で男の子役が3人、女の子役が3人、全員が本当の園児に見えてしょうがない。悪ガキだったり急に素直になったり、高校生と一緒にふざけたり、そうかと思うと本当の先生の言うことは素直に聞いたり……
演劇部の女子が幼稚園でのお話会にシエクスピァの『十二夜』を脚色して演じて、三角関係にある他の3人もその話の中に入れ込んで、うまく入部させようとしたり、春花は家庭の事情で演劇部を辞めていたりとかのサイド・ストーリィが上手く働いていて現実的で面白い物語になっている。
「りく」は、すべり台を滑れないことがみんなに女みたいな度胸なしだと言われている。滑り台の下で姉が見てくれないと滑られないのだ。そして実は、姉の春花も別れた母が見ていないと滑られなかったのだ。
姉が幼稚園に来たことで荒れ狂っていた「りく」は、姉に見てもらってようやくすべり台を滑り下りることが出来たのだった。
二つの物語が無理なく融和して、園児たちの演技が頬笑ましく高校演劇としては見応えがあった。



演目4  レンタルロボット 
 
上演時間/15:55〜16:45
上演高校名/空知支部・滝川西高校
作/滝井幸代『レンタルロボット』
脚色/滝川西高校演劇部

男の子の成長物語

 一人っ子の少年・9歳の健太は弟が欲しい。公園の近くで「レンタルロボット」の看板を見て、さっそく様々な条件をインプットして弟ロボットをレンタルする。
 両親を始め周りの人たちは、ロボットの発する制御電波によって6歳の弟の存在を既成の事実として受け入れている。
 兄・健太は最初のうちは溺愛するが、だんだんに我欲が出て虐めたり暴力を振るったり、そのうちに兄としての我慢の限界に達した健太は、弟ロボットを返品してしまう。
 そのころ母親は健太に秘密を告白するといって「健太は子どものいない私たちがレンタルロボットとして借りているロボットだ」と告白する。
 だがそれは健太の見た悪い夢だったのだ。弟ロボットがレンタルショップに返還された時点で、健太の長い夢は醒める。そして、誰にも弟ロボット存在の記憶はない。新しく産まれる本当の弟に対する健太の真実の愛は、たぶん大丈夫であろう。
 演技が全体に学芸会っぽくぎこちないのと、特に少年を演じた二人は素の高校生そのもので、さらに弟を演じた女子は女子高生そのもので白ける。前作の幼稚園児のリアリティとの落差にビックリした。
 舞台装置は、下手3分の1が自宅の部屋、中央奥がレンタルロボットの店、そして上手がベンチ1脚の公園なのだが、自宅の部屋のシーンが多く、ほとんどはここが舞台なのでバランスが悪いのと、レンタルロボット店が殺風景で魅力がない。もしかして夢の中の風景としてわざと殺風景にしたのかなとも思うのだが、素直に魅力的にしたかった。
 この物語は、とても良くできていてミステリィっぽい表現で描いた一種の成長神話なんだろうが、表現力が幼いので観客の欲求不満が大きいのだ。
     ☆
全道10か所の各支部参加100校から選出された17校の作品が3日間に亘って上演されたのだが、僕は他に観るべき舞台が山積しているので、やっと初日の4校の4作品だけを観ることが出来た。
たった4校だけの観劇だったが、その質の高さに正直驚いたのだ。既成の作品でも、どこから探してくるのか、たぶんインターネットからだと思われるのだが、それを見事に自分たちの身丈に合うように潤色する手際に感心する。高校生の柔軟さが快い。高校演劇の面白さ、楽しさを再確認したような気がする。
そして、滝川西高校以外の参加校のリアルな演技に感心する。滝川西は演技に問題が大きいけど、この作品を選んだ感性は素晴らしいので技術を学んで欲しいと思う。
そして自分たちで創った作品は、まさに高校生だけが持つ心象を巧く丁寧に創っているという印象を受けた。
音更という郡部にある高校に男子の部員が圧倒的に多いのに感心したが、やはり全体的に女子が多いのが気になるのだが……