演 目
隣りの男
観劇日時/12.11.15. 19:00〜20:40
劇団名/北翔大学舞台芸術
公演形態/3・4年目公演
作/岩松了 演出/村松幹男 演出補/進知樹
照明/五十嵐輝信 音響/浅田あゆみ
小道具・衣装・メイク/阿部まりな 制作/阿部弥生
劇場名/ポルトホール

静けさを秘めた大人の人間関係

 時計屋の主・竹田(=川口岳人)は、店裏の自宅に一人住まいで、いつもその自宅にいて客が来ると店へ出るのだが、あまり客が来る風もない。
 この部屋には隣に住む失職サラリーマンで現在はタクシーの運転手をしている、これもあまり仕事熱心とはいえない宇野(=田崎康平)が入り浸っている。
 竹田も別にそれを咎める風もなく、何となく雑談に日を費やしているようだ。電話にしろカセットプレーヤーにしろ、いかにも昭和後期の時代が感じられる部屋だ。 
 そこへ宇野の妻である八千代(=丸川由希)がくる。どうも竹田と八千代には何かあるらしい……
 3人が3人ともそれを知りながら、はっきりとはさせずに何となく屈折している。表面を無事に装いながら、一触即発の危機は微妙に避けられているような日々らしい。
 2階を改装して新しく造った貸部屋の客・宮地(=佐々木茉莉)が下見と契約に訪れる。状況はどう変化するのか?
 そういう互いに一種の奇妙な友情を保ちながらも、何事もないようにも一触即発のようにも見えて営まれる日々の暮らしが展開される。例えば真夜中に無言電話が掛ってきたり、ふざけて椅子に縛ったら本気になりそうになったり……
岩松了は「静かな演劇」の一方の旗手でありながら、この舞台の様にかなり危ない、ちょっとミスティーじみた状況が描写される。
 心理の奥深いところを微妙に描写する大人の芝居、心理を奥に押し込んで一見、何事もないように見えながら、その実、内面の複雑なあり様をそれとなく感じさせるような、そういう演劇を上演することは、学生演劇としては役者としての修業の課程なのであろうか? それを落ち着いて巧妙に演じたことを評価したい。
 そしてそれは昨秋にこの集団が上演した『幸せ最高、ありがとうマジで!』でも同様に感じられたことであった。