演 目
ねじまきロボットアルファ
観劇日時/12.11.08. 19:30〜20:20
劇団名/トランク機械シアター
脚本・演出/立川佳吾 人形製作/大門奈央子・ササララボ
衣装/松下奈未 舞台美術/高村由紀子 照明/岩ヲ脩一
音響/土橋あい 舞台監督/町田誠也 宣伝美術/チュウゲン 
制作/住吉晃誉・中村友紀・児玉乃理恵・高平幸恵 企画・監修/大門奈央子
劇場名/札幌市 子ども人形劇場 こぐま座

愛に目覚めた王妃の物語

 ロボットの国の王妃様(=知北梨沙)は自分の子どもが亡くなったのを悲しんで、国中すべてのロボットの名前を無くし番号で区別することにした。そうすれば悲しみを感じることがないだろう、番号のロボットは人格が無くなるからだ。という思いやりだと信じている。国民総背番号制の非人間性を皮肉る。
 ところが、名前を捨てない一人というか一台のロボットがいた。アルファ(=曽我夕子)である。それはアルファという固有の名前があることで他人を意識することが出来て、それによって他人を思う気持ちが強くなるからだと信じている。
 ところでアルファには、誰かに頭の上のねじを巻いて貰わないとエネルギーが無くなり、動けなくなるという特質がある。つまりロボットといえども他人の力がないと生きてはいけないという人間的な特性がある。というかそもそもロボットの話だが人間の話を象徴的に描いているのだ。
 巨大なロボット(=立川佳吾)がいた。アルファは何とか彼とコンタクトがとりたい。その巨大ロボットは実は見かけに寄らず気の良いロボットだった。
 アルファの意を受けてその巨大ロボットは「つぎはぎ」と名付けられた。身体が金属のつぎはぎでできているからだ。
名前を持つことは二人だけの秘密だ。なにしろ、この国では番号のないロボットは即・廃棄物にされるからだ。
 「つぎはぎ」は王妃様の意を受けて全国を見張る高い塔を造っている。「つぎはぎ」は王妃が好きだった。
 それを知ったアルファは「つぎはぎ」に協力して塔の建設の手伝いをする。やっと完成したのに塔は王妃によって破壊される。王妃は二人の秘密を知ったのだ。だが二人は負けずに再建に掛かる。アルファは王妃にも名前を付けようとする。ちょうどそのとき、王妃は第二子を懐妊した。王妃はアルファの気持ちが分かって自分も第二子に命名する。
 話は途中でほとんど結末を推測できるが僕はそこで二つの結論を推測した。一つはこの舞台の通りのハッピーエンドであり、もう一つは王国の破滅である。僕は破滅の方が現実に対する警告として演劇的であろうと思った。でもそうはならなかったのはやはり未来に対する希望であろう。
 それともう一つは、この舞台がなぜ人形劇なのか? という疑問がある。ロボットという設定は、現実の人間の存在がロボット的だというアイロニィーを見て取れるから良いのだけども、これを人間劇ではなく人形劇であるということは、その人間→人形→ロボットという二回の意識変化が必ずしも二乗になって強化しているとは思えなかったのだ。
 むしろ人形で表現するまだるっこしさの弊害の方が大きくて、マイナスのような感じが強くしたのだった。子どもの観客にも馴染みやすいように人形劇にしたのだとは思うのだが……別に人形劇にする必然性は感じられない。ロボットだから人形というのは安易で逆に煩わしく感じられる。