演 目
楽 屋
観劇日時/12.11.06. 19:00〜20:10
上演団体名/北翔大学舞台芸術
公演形態/三年目・四年目公演
作/清水邦夫 演出/森一生
演出補/進知樹 照明/今井翔太 音響・衣装/森本早貴
小道具・メイク/大関莉奈 制作/阿部弥生
劇場名/ポルトホール

切ない生への執念

 この芝居も何度観たことだろう? 人気の戯曲だからいろんなアマチュァの劇団でも上演され、僕も数え切れないほども観たし第一、僕が昔に所属していた旭川の劇団「河」が長い間に何度も上演していたという経験があるために一層の思い入れが強い作品でもあるのだ。
 売れなかった女優・A(=田中伶奈)は戦争中の爆撃で命を落とし、女優・B(=野田頭希)は失恋自殺で亡くなり、その二人が想い出の強い劇場の楽屋に幽霊となって住み付き、来る当てのない役のメーキャップや演技の稽古に明け暮れているという切ない芝居だ。
 最近、売れ出した女優・C(=市川薫)は、今夜もチェホフの『かもめ』の主役ニーナで出演中、二人の幽霊が居るのも知らず、もちろん見えないわけだけど、ストレッチをやって発声練習をやって颯爽と舞台へ出て行く。
 Cは役者として長年の艱難辛苦、獣のような吠え声で呻きながら精進した結果この歳になってやっと現在の位置を獲得したのだ。
 残った二人は過去のことを思い出したり、来る当てのない役の稽古をしていると、枕を抱えた若い女優・D(=金美沙子)が、ふらりと入って来る。彼女は自分が病気療養中にCにニーナの役を横取りされたという妄想に取りつかれていて、Dに枕と交換に役を返せと強要する……
二人が幽霊だという状況説明表現の足りなさ。プロローグとエピローグは演出の見せ所であるのだが、この場面の表現の無策さ。この二つが決定的欠陥である。
 若い役者はそれなりに表現力があるけれど、女優・Aと女優・Cとは人生の蓄積を表現するには若さが邪魔をした。