演 目
星の王子さま
観劇日時/12.10.21. 19:00〜20:15
劇団名/風蝕異人街
作/寺山修司 演出・照明/こしばきこう
舞台美術/山本美里 音響操作/遠藤沙織
制作/実験演劇集団風蝕異人街
出演/永遠の処女・元売春宿のホテル経営者であるウワバミ=平澤朋美 
男装の麗人・オーマイパパ=三浦千絵 娘・点子=丹羽希恵
山谷義孝 田村嘉規 平野たかし 丸山アキナ 岡谷友美 福永翔平 
長谷川碧  シチュー山本 相木ヘレン
劇場名/アトリエ阿呆船

頭でっかちの自己満足

 寺山修司が子供のころに傾倒した『星の王子さま』を大人になってから省みたときに、あれは何だったのか? という疑問から書かれたという戯曲であるらしい。作者の寺山修司は、その『星の王子さま』ノートに次のように書いている。
 「(略)星の王子さまの大人になってしまった無惨な姿はあちこちに見出される。(中略)そしてこうした『星の王子さま』を捨ててきた人たち、「見えるものを見てしまった」人たちが、もっとも深く現実原則と心的な力との葛藤になやみながら歴史を変えていく力になっていくのである。私はこの戯曲で復讐をしたいと思った。『星の王子さま』にではなく、『星の王子さま』を愛読した私自身の少年時代に、である。(略)」。
 だからであろうか、物語は一貫して寺山の照れと弁解に終始している。理屈っぽく何となく言い訳じみている戯曲だ。それを舞台化するには、その寺山の照れや言い訳を、どう解釈して舞台上に具象化するかが問われる。
 だがこの舞台は中途半端に終わってしまった。特に表現の虚偽を剥ぎ取るインパクトが弱いのだ。寺山が突きつけた虚偽をひん剥く力強さが感じられないのだ。
 淡々と物語を進めているとしか見えない。表現というものが持っている虚偽の本質を暴かないと、この舞台の存在価値はないのだ。
 きれいごと過ぎる。インパクトがない。女性の肉体的な存在だけを強調しているような気だけが先行する。
 以前に当時のTPSが上演した時にもほとんど同じような感想をもったのだが、今回もその域を出なかった。
 ただその時はラストで舞台装置を全部取っ払うと裸の劇場が現れて、その意図は良かったのだけども、実際に現れた裸の劇場が貧相だったのが残念だった記憶がある。もっと虚飾の現実が観たかったのだ。