演 目
あなまどい
観劇日時/12.9.21. 13:30〜16:20(途中休憩15分)
劇団名/前進座
公演形態/旭川市民劇場9月例会
原作/乙川優三郎(『穴惑い』より)
脚本/金子義広 演出/橋本英治 美術/内山勉
照明/石島奈津子 音楽/小六禮次郎 効果/小倉潔
舞台監督/中橋耕史
劇場名/旭川市民文化会館 大ホール

異常な時代の一人の人間の生き方

 「穴まどい」とはシーズンが終わっても巣穴に戻れなかった蛇が、戻るべき巣穴を探して迷っている光景をいう。
 上遠野関蔵の所属する藩には、「足軽は往来で上士と出会った時には平伏しなければならない」という仕切たりがあったという解説が当日パンフに書かれていた。
 足軽の寺田金吾(=亀井栄克)は、病篤い女房を背負って医者の家に向かって雨の中を走っていたとき、雨宿り中の徒士頭・上遠野久作(=松涛喜八郎)に出会い平伏したが、その時、雨に打たれた女房がその場で絶命する。
 絶望した寺田は、前後を忘れて上遠野を切り捨てた。久作の息子・関蔵(=嵐圭史)は新婚の妻・喜代(=浜名実貴)を残して仇討ちの旅に出る。
 物語は此処から違和感がある。仕切たりを破った方に非があるならば違った方法がないのだろうか? もちろん最終的にはそんな非人道的な仕切たりそのものを批判するという物語の構造にはなっているのだが、発端に上級武士が足軽に討たれるという違和感が障害になって、話に乗りきれない。
34年後、仇討を果たした関蔵は故郷へ戻って家督などの整理を済ましたが、万事に虚無感を感じ妻を連れて二人だけの生活を求めて江戸へ出る。
 その道中で関蔵は、実は自分は金吾を許したという意外な告白をする。金吾の苦衷と非人道的な仕来りに悩んだ関蔵は自分の30年以上の苦難と憎悪を断ち切ったのであろう。
 単純な物語と素朴な人間の生き方を延々と3時間近くも大仰に表現する舞台に付き合うのはかなり退屈する。
 その他13名の出演者は、多数に付き割愛する。