演 目
歯並びのきれいな女の子
観劇日時/12.8.15. 14:00〜15:00
プロデユース/NPO法人コンカリーニョ
公演形態/札幌演劇シーズン12‐夏
作・演出/イトウワカナ 監修/泊篤志
舞台監督/高橋詳幸 照明/相馬寛之 音響/橋本一生
舞台美術/足立高視 衣装/佐々木青 
小道具/米澤春花 プロデユーサー/小室明子
劇場名/コンカリーニョ

家庭人情劇

 個人で飴玉製造工場を経営していた男が亡くなった。その初七日の法要が終わって自宅へ帰って寛ぐ、未亡人になった妻・みずえ(=佐藤亜紀子)、長女・まいこ(=福地美乃)、まいこの弟・しんじ(=上西佑樹)。
 まいこの婚約者・光男(=小林エレキ)は歯科医である。そして共同経営者の吉田(=宮澤りえ蔵)はほとんど準遺族であり、その息子・優作(=赤沼政文)も親戚同様である。
 そこへ未知の若い女性・さおり(=佐藤愛梨)が突然、訪ねて来る。さおりを巡って興味津々、一同の謎は深まり、時間が経つ。
 今日は故人が指定した遺言書を始めて開く日でもある。財産はないが家族思いの個人は、工場の後継などについて、どんな思いがあったのか早く知りたいところだ。
 一足遅れてやはり故人の甥でもある司法書士の大輔(=かとうしゅうや)が来る。彼はさおりの身元を知っていたのだ。
 実はさおりは故人のもう一人の娘で、まいことしんじの異母妹だったのだ。家族の知らないもう一人の娘だったのだ。
 混乱し嫌悪し反発する家族。だが最近に母を亡くしたさおりは清純であり素直であり、父を愛して孤独を守った母を敬愛していた。ただ実の父の霊前にお詣りしたかっただけなのだった。
 父に溺愛されてその飴玉で育ったまいこの歯は、全滅状態だったから、歯並びの綺麗な異母妹に強烈な嫉妬も感じる。ましてや婚約者は歯科医である。
 物語の展開はさすがに起承転結が綻びなく、つい見入ってしまうが、一人も悪人の出ない、善意の人たちの善意による苦しみとハッピーエンドに終わる家庭と家族人たちの人情劇であった。
 しんじと優作との関係が初演では、すぐに分かる創り方でいささか興を削いだが、今回ではちょっと脇に引いた感じで、逆にそれが面白かった。
 全体に謎を孕んだ緊迫した場面が続く中、ときどき誇張されたコミカルなシーンが嫌味なく逆に、そのシーンを客観的に観られることにイトウワカナ得意の演出法を垣間見た気がする。