演 目
花咲くチェリー
観劇日時/12.8.8. 13:30〜15:50(途中15分休憩)
劇団名/文学座
上演形態/旭川市民劇場8月例会
作/ロバート・ボルト 訳/坂口玲子 演出/坂口芳貞
美術/乘峯雅寛 照明/金英秀 音楽/加藤健一 
音響効果/望月勲 舞台監督/北則昭 演出補/所奏
制作/友谷達之
劇場名/旭川市民文化会館 大ホール

家庭崩壊劇の象徴するもの

 ロンドンの保険会社で働く中年サラリーマン・ジム(=鍛冶直人)は仕事に熱が入らない。家族の為に一生懸命に働いているが、本心は故郷でリンゴ園を経営したいと夢を見ている。これはおそらく大多数のサラリーマンの心情だろう。
 だが具体的なプランもなく決断力も実行力もないベルにとっては酒に逃れるしかなく徐々に酒量が増えていく。
 ついに彼は家族に無断で会社を退職し、当座の金に困って妻(=名越志保)の財布から小金を抜き取る。嫌疑は息子(=植田真介)に掛かるがジムはひたすら卑怯にも逃げ回る。
 ジムが失職したことを知った妻は、愛するジムと家族の為に住宅を処分してリンゴ園を購入するべく走り回る。 
 だが優柔不断のジムは、言を左右にして何とか再就職しようと画策する。堪忍袋の緒が切れた妻は絶縁宣言を申し渡し、家を出る。
混乱したジムは妻に取り縋り、去ろうとする妻に何とか自分の最後の腕力を誇示して元に戻そうとするが、妻はすでに完全に見限る。狂気に陥ったジムは力尽きて倒れ込む。真っ黒の背景には、これも狂ったようにリンゴの花が咲き乱れる。
 自己中の男の悲劇は同情できない、バカな生き方だと吐き捨てるのみだが、何とこの男の存在のリアリティを我々はわが身に照らしてバカな奴だと簡単に笑い飛ばせられるのか?
 表現がリアルなので家庭劇と感じられ易いが、実はこの状況は家庭という小社会に止まるものではなく、現実の大状況にも当てはまるのだという思いは強烈なのだ。
 その他の出演者 妹娘=藤アあかね・友人=松岡依都美・種苗販売業者=石川武・会社の元上司=大原康裕。