演 目
瀕死の王さま
観劇日時/12.8.5. 14:00〜15:30  二回目8.16.
劇団名/札幌座
公演回数/第35回
作/ウジエーヌ・イヨネスコ 翻訳/大久保輝臣 
脚色・演出/斎藤歩
照明プラン/熊倉英記 照明オペレーター/齋藤由衣
舞台スタッフ/札幌座 衣装協力/黄金節子
プロデューサー/平田修二 制作/阿部雅子・横山勝俊
出演/王さま=斎藤歩・王妃マルグリット=橋口幸絵・
医者=弦巻啓太・衛兵=佐藤健一・ジュリエット=高子未来
王妃マリー=宮田圭子 8月16日のマリー=坂本祐以
劇場名/シアターZOO

現実を直接に過激化した表現

 絶対に逃れられない、尽きた寿命の宣告を受けた専制君主の王さまの、慌てふためく様子をコミカルに描いた90分の舞台。人間の力では絶対にどうにもならない自分の命を、権力を用いて何とか生き延びようと焦る人間の、愚かさと本能の哀しさ。
 その解説を聞いただけで、現実の政治や集団の在り方や人の生き方などなどを、ズバリと諧謔化しているだろうと想像ができるような話だ。
 しかも今回は様々な具体的な仕掛けを投入しているので、あまりにも現実の、しかも政治状況そのものに当てはまり過ぎたマンガチックな表現の舞台で、簡単に笑い飛ばすよりも逆にアナーキィな焦慮さえをも感じてしまうような舞台だ。
 21世紀の政治状況に対する直接的で過激な断罪告発のそれこそ過激な表現であろうか。現在の演劇の表現はこれが新しいのだろうか? 本号の後記に詳しく書くのだが、一番新しい演劇とはこのように直接的で過激な断罪なのだろうか?
 後半になってから物語は、死に至る王さま当人の時々刻々の絶望的な心境の微細な居たたまれないような時間……一人去り二人去り最後には王妃だけが、まるで引導を渡す僧のように静かに王さまをあの世へと導くのだ。