演 目
黄昏はただ銀色
観劇日時/12.07.29. 17:00〜18:20
劇団名/劇団怪獣無法地帯
公演回数/第17回
作・演出/棚田満 
照明/前田ゆかり 音響操作/ハナブサコウ
舞台美術/濱道俊介 衣装協力/佐藤宏美 
宣伝美術/山本美里 制作/要害里奈
劇場名/BLOCH

見事なドンデン返しにみる世界の恐怖

 相思相愛の二人(=コウジ=渡邊ヨシヒロ・サツキ=斎藤詩帆)。だが二人には父親という絶対的権威の障壁がある。
 意を決したコウジはサツキの父母・長山夫婦(=長流三平・伊藤しょうこ)の家を訪れると、肝心のサツキは叔母の急病で母の代わりに見舞いに行っているということで、コウジは退席しようとする。
 のとき、宅配便の配達員(=吉川直毅)が来るのだが、その宅配便屋が突然ピストルを向ける。コウジは強盗かと思うのだが、両親はとっさに銃を持ち出して応戦し、茶の間は戦場と化する。臆病なサラリーマンであるコウジは縮みあがる。
 両親が、もったいぶって極秘裏に話すところによると、自分たちは、紛争と戦乱の続く中東地区の各勢力の代理戦争を請け負っている民間の傭兵組織であるという。実はサツキはある雇用主の国王の娘が対立国に拘束された対抗措置として相手国の契約者である町内会長の藤森家(=梅津学・尾木志都子)に誘拐されているのだと明かす。
 これから救助に向かうと言う父親に、コウジはビビりまくり何とか帰ろうとする。その中にも波状攻撃を仕掛ける宅配便屋や新たなヒットマン(=田中次朗)の襲撃と、サツキの急難にコウジの気持ちは揺れ動く。
 父親の案内で武器調達の専門家、豆腐屋夫婦(=菅原啓太・シチュー山本)の店へと赴く。武器を得た父親とコウジは新たに出現した情報専門の山田(=長谷川碧)と田中(=忠海勇)の情報により藤森宅へと襲撃と救済脱出に向かう。
 さて寝返り続出の情報戦の末に6人(長山夫婦・情報屋二人・コウジとサツキ)対6人(藤森夫婦・豆腐屋夫婦・宅配便屋とヒットマン)に別れた敵対同志は銃撃戦を展開する。
 気を失ったコウジが気が付くと、11人は何と祝福気分なのだ。父親の打ち明ける話によると、町内会では、コウジとサツキの話を父親から聞いて、コウジのサツキに対する愛情度を確かめるために打った芝居であり、コウジはそのテストに満点合格したのだというのだ。
 それを聞いたコウジは逆切れする。そんな生死を掛けるテストなんてバカにしていると憤然と帰ろうとするのだが、サツキが引き止めようとして、コウジは倒れ込む。
 翌日会社の帰途、居酒屋で上司の課長にその話をすると「そんな秘密結社の話を他人にしていいのか?」と聞かれる。実はその課長もその一員だったという落ち……
 バカバカしいような誇張であり銃撃戦というのが些か引っ掛かるが、むしろリアリティの色濃くこの銃撃戦もギャグっぽく中近東の軋轢も現代的であり、前回の「ヤクザ・リア王」とも並ぶエンターテインメント満載でありながら、現在の頭でっかちの風潮に対する、人間の素朴な力と必死の愛情を見せつけて、力と勇気を讃える舞台になった。
 この劇団の殺陣は必見の迫力があるのだ。