映 画
11・25 自決の日   三島由紀夫と若者たち
鑑賞日時/12.7.14. 16:30〜18:30
企画・製作・監督/若松孝二 企画協力/鈴木邦男 
プロデューサー/尾崎宗子 
ラインプロデューサー/大日方教史・大友麻子
脚本/掛川正幸・若松孝二 撮影/辻智彦・満若勇咲 
照明/大久保礼司 編集/坂本久美子 録音/宗晋瑞 
音楽/板橋文夫 音楽プロデューサー/高護
雅楽演奏/日本雅楽会
キャスト/すべてほとんど無名に近い若い俳優たち
劇場名/シアターキノ

抽象的・感覚的なセンチメンタリズム

 若松孝二監督は08年5月に連合赤軍浅間山荘事件の顛末を描いた映画『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』を創った。当時の僕の感想は、「総括という名の同志殺しとして暴走化した人間のありようの不可思議さ」であり、「当時の体制がこの暴走を演出し、反体制を悪と規定して完全に閉じ込めようとし、それが成功し、その後の活動・運動を再起不能の状態に殲滅させた。」といわれていることの追認であった。
 そして10年8月には『キャタピラー』で、政治体制の不条理の根源を描いた。「赤軍」が左翼の側の思いだったから今度の「三島由紀夫」では右の論理を描くのだろうと推測した。
 だが、この「三島由紀夫映画」は、三島を巡る多くの事実を断片的に次々と提供するだけの客観的描写だけで、映画製作者の視点が曖昧だ。しかも三島由紀夫の論理を説明するのではなく、エスタブリッシュメント打倒の暴力闘争という形で、日本精神の美化を極めて感覚的・感傷的に描いているだけなのだ。これでは三島は誤解されかねない。
 これが若松監督の3部作であるならば、とても不満だ。11年6月には、それらすべてを見通すような『マイバックページ』を観ていたので、「キャタピラー」・「浅間山荘事件」・「三島由紀夫」と繋がれて「マイバックページ」で終結したかと思ったのだが、この「マイバックページ」は若松作品ではなかったし、「三島由紀夫」が消化不良だったのが残念……